『柘榴のスープ』マーシャ・メヘラーン

柘榴のスープページの間から、香辛料の独特の香りが漂ってくるような作品である。
舞台は、アイルランドの小さな村・バリナクロウ。
イラン革命を逃れてきた三姉妹が、この田舎町で「バビロン・カフェ」というペルシア料理店をオープンするところから物語は始まる。長女のマルジャーンは、おいしい料理は人に癒しと活力を与えると信じて疑わない。次女のバハールは、過去に受けた暴力が原因でナーバスになっている。末っ子のレイラーは、周りを華やかな雰囲気にする美しい少女。
突然現れたよそ者に、最初はとまどっていた町の人たちだが、おいしい郷土料理に魅せられて徐々に三姉妹を受け入れるようになっていく。本書は、文化の違いを超えた心の交流を、ユーモラスに描いた物語である。

ショコラ (角川文庫)
料理を通して打ち解けていく内容は、ジョアン・ハリスの『ショコラ』と似ている。
自分とは違う「異質」な存在は、分からないだけに怖いものだ。ここでは、イラン人というだけでテロリスト視されてしまう厳しい現実が描かれる。けれど、係わりをもち、相手のことを知っていく内に気づくのだ。人種や宗教が違っていたとしても、自分と変わらない人間であるということに。

そうはいっても、歩み寄るきっかけをつかむのは難しい。本書では、料理が潤滑油の役割を果たして、人々を結びつけてくれる。次々と登場するペルシア料理は、思わずよだれが出そうなほど魅力的で、これで皆の心を溶かしたのは、納得がいく。
また、章ごとに、物語に登場する料理のレシピが載せられているのも嬉しい。実際に作ってみてもいいし、文字だけ見てどんな料理か想像するだけで物語の世界に浸ることができる。

タイトルにもなっているザクロのスープは、三姉妹の苦々しい過去と密接に係わる料理なのだが、ラストには、希望の象徴となっている。辛い思い出がスパイスとなって、彼女たちの人生をより味わい深いものにしているのだ。[Amazon]

アメリカ(イラン出身):渡辺佐智江・翻訳

Pomegranate Soup
Marsha Mehran
Pomegranate Soup

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