『睡蓮の教室』ルル・ワン
- ルル・ワン
- 新潮社
- 2940円
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書評
蓮は、泥水の中できれいな花を咲かせる。しかも、その泥水が濃ければ濃いほど、大輪の花を咲かせることができるという。
泥水は、しばしば汚濁の俗世―人生におきかえれば、苦しみ・悲しみ・困難など―に見立てられる。
この作品では、タイトルの「睡蓮」は三つの意味で使われている。
一つは、語り手の少女の名前として。
二つ目は、彼女が過ごした収容所生活での憩いの地に咲く植物として。
そして三つ目は、抑圧された社会状況の中で、汚れることなく美しく花開いた、二人の少女の友情の象徴として。
本書は、文化大革命期の動乱の中で育まれた、二人の少女の友情を描いた長篇小説である。
当時の政治や社会に対する痛烈な批判が込められているとはいえ、眼目は友情にある。友情という普遍的なテーマだからこそ、文化や国の違いを越えて、私たちの心に深い感動をもたらすのだ。
恵まれた知識人の両親のもとで生まれた睡蓮と、貧しい農民の娘・張金は、境遇の差を乗り越え、強い絆で結ばれていく。そんな二人に立ちはだかる身分の壁と狂った社会状況。容赦なく浴びせられる侮蔑に懸命に耐え、立ち向かっていく少女たちの姿が胸を打つ。
ひとつひとつのエピソードがリアリティをもって描かれ、圧倒させられる。難解な学術的資料より、文革の実態や差別意識の本質を、「人間」という観点で伝えていると思う。
作品に漂うのは、理不尽に自由を抑圧された人間たちの「悲しみ」である。やがて悲しみは「怒り」となって、彼らの内に蓄積され、ある者はその力を自分に向け、ある者は他に向けて発散させるのだ。
ここでは、「階層」と「階級」というダブルスタンダードが用いられているので、終始違和感を覚える。「農民(階級)から学べ」とのスローガン空しく、蔑まれる最下層の人々。
この皮肉ともいえる矛盾した基準の狭間で生きるのが、二人の少女たちなのだ。だから彼女たちの友情の日々は、周りが暗く沈んでいるほど、まぶしく映るのである。
細切れになる物語の構成は悪く、あっけないラストには不満が残る。小説の完成度としては決して高いといえない。
けれど、それを補って余りあるエネルギーに溢れており、特に10代の人たちに読んでほしい作品である。[Amazon]
オランダ(中国出身):鴻巣友季子・翻訳

睡蓮の教室

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