『規制緩和に挑んだ「名君」―徳川宗春の生涯』大石学・編

規制緩和に挑んだ「名君」―徳川宗春の生涯徳川宗春。
日本における彼の認知度は、一体いかほどのものか。
私の場合、出発点は田沼意次だった。田沼意次に興味を持って調べているうちに徳川吉宗の重農主義の政策までさかのぼり、徳川吉宗のライバルと目される徳川宗春に行き当たった。 それまでは、宗春の名前も、何をした人物なのかも知らなかった。
単に私の知識がないだけかもしれないが、吉宗に比べると有名ではないことは確かだろう。

時代は、暴れん坊将軍・徳川吉宗が享保の改革を断行している頃。
御三家のひとつ尾張藩主・宗春は、吉宗の規制・緊縮政策に真っ向から異論を唱え、経済の発展・社会の活性化を目指した人物である。

本書では、近世史、近世文学、美術史、といった分野の異なる執筆者によって、多角的に宗春に光を当て、その実像に迫っている。読み進めていくと、政治家にとどまらず芸術家としての才能も兼ね備えた、なんとも個性豊かな人物であったことが分かる。
本書の中で精彩を放っているのが、宗春が著した『温知政要』を解説した一章だ。法規制の緩和や消費の拡大、個性尊重や人命重視の思想は、彼の先見の明を読み取れて大変興味深かった。現代の政治や経済においても、充分通用する考え方だと思う。

本書を読んで宗春に興味を持った方は、海音寺潮五郎の 『吉宗と宗春』を手に取ってみてほしい。こちらは小説だから、もっと楽しく読める。しかも彼と吉宗の方向性の違いが分かりやすくまとまっており、オススメである。[Amazon]

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