『市場(スーク)の中の女の子』松井彰彦

市場(スーク)の中の女の子経済書としては、大胆なつくりである。
最初書店で見つけた時、児童書かと思った。

内容は、本好きの少女・路香が、図書館から、時代も国も異なる別の世界に迷い込む、というファンタジーだ。
イタリアのジェノヴァから、ベネチア、アラビア、中国、日本と、西から東へ旅しながら、少女は市場の原理や文化との関係を学んでゆく。
貨幣制度や、需要と供給の関係、古典派経済学とケインズ経済学の立場の違いなど、経済学の基本を物語に盛り込み、学べて楽しい一冊に仕上がっている。

著者は、ゲーム理論などを専門とする経済学者。
創作は専門外だから、物語としては、単純で稚拙なものだ。けれど、難しい用語を極力使わずに、「経済」というものを分かりやすく伝えようとする著者の努力は、充分にうかがい知ることができる。

本書では、これまでの中心だった「市場の経済学」に対して、「文化の経済学」という研究を紹介している。両者の違いを、川の流れに例えて説明してあり、理解しやすい。
「モノが増えれば幸せも増すのか」という疑問から出発した「文化経済学」は、価値観の多様性を認める学問ともいえる。
「文化」とあるだけに、その研究分野は経済だけに留まらず、社会学、心理学、宗教学など、人間の営み全てを幅広く網羅するものだ。可能性は未知数だが、アピローチとしては面白いと思う。

本書は、系統立てて説明してあるわけではないので、経済の入門書としてはお薦めできない。
しかし、人間の幸福を追求するという経済学の本質をしっかり学ぶことができ、経済学がぐっと身近に感じられる一冊だ。[Amazon]

  1. 心理学の考察

    囚人のジレンマ 期待効用 混合戦略ミニマックス定理 非ゼロ和 非協力ゲーム ナッシュ均衡 協力ゲームコア (ゲーム理論) 展開型ゲーム 標準型ゲーム 提携型ゲーム 微分ゲーム 進化ゲーム・制度理解型の数理社会学は、社会科学の共通言語たりうるか・誘惑される意志 人はなぜ

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