『大統領の最後の恋』アンドレイ・クルコフ
- アンドレイ・クルコフ
- 新潮社
- 2940円
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書評
「新潮クレスト・ブックス」シリーズの裏表紙には、著名人たちによるレビューが載せられているのだが、本書に寄せられたジャーナリスト・外岡秀俊氏の書評には、3点違和感を覚えた。喧嘩を売るつもりは毛頭ないが、それらを指摘することは、そのままこの作品に対する私の書評につながるので、長くなるが引用したい。
「この長編は、青年と壮年と老年という一人の人生の三段階を同時進行で物語り」
確かにこの作品は、セリョージャという男性の20代、40代、50代が同時進行で語られていく。女性に関心をもち血気盛んな20代を青年、仕事と家庭に責任感が増してきた40代を壮年というのは分かるが、50代を老年というのだろうか。
「初めは三重奏として、そして最後はすべての音楽がひとつに繋がり、壮大な円環を閉ざす交響曲のように」
3つの時系列からなる物語は、一見関連性がなさそうで、実はゆるやかに重なり合っている。あちこちに張り巡らされた繋がりを見つけるのもこの作品の楽しみの一つで、そこがニヤリと笑えるのだが、最後にすべてがひとつに繋がるわけではない。むしろ、繋がるようで繋がらない、「遊び」のような部分があるのが、魅力だと思う。
人生というのは、「ここからここまでが青年時代」とはっきり区切りがつけられるものではない。瞬間が積み重なって一日となり、一日一日が続いて月、年となる。3つの物語がこれからも続いていくような終わり方に、人生の妙を感じるのだ。
「『ペンギンの憂鬱』の作者はこの新作で、より奥の深い世界に足を踏み入れたように思える」
私は前作『ペンギンの憂鬱』の方が、不気味で奥深くに潜んでいる闇を見た思いがした。ウクライナにおける微妙な政治・宗教・民族問題や、主人公の孤独な胸の内を丁寧に描いているとはいえ、むしろ本書は前作より軽妙で、読みやすくなった気がする。
個人的には、独特な味わいのあった『ペンギンの憂鬱』の方が好みだが、本書は構成の巧さが光っている作品だ。
ただ、「泣ける」とか、「感動」といった分かりやすい類の本を読みたい方には、あまりお薦めできない。終始淡々と語られる一人の男の人生は、気長に付き合う覚悟がいる。
好きという訳ではないのに、なぜか気になる人物がいる。私にとって、クルコフはそんな作家である。[Amazon]
ウクライナ:前田和泉・翻訳
※本書は、本が好き!経由で献本していただきました。

大統領の最後の恋

大統領の最後の恋@アンドレイ・クルコフ
大統領の最後の恋アンドレイ・クルコフ新潮社2940円Amazonで購入livedoor BOOKS書評/海外純文学_uacct = "UA-918914-3";urchinTracker();あり?書誌データによると『南米文学のごときマジカルな展開と、カフカを思わせる不条理な色合い』っていうハナシだったんで
『大統領の最後の恋』 アンドレイ・クルコフ
『大統領の最後の恋』 著:アンドレイ・クルコフセルゲイ・ブーニンは孤独だった。ソ連崩壊後、政治の世界に足を踏み入れ、遂に大統領にまで昇りつめたが、22歳で結婚に破れて以来、どの恋にも空しさと悲哀がつきまとう。政敵との闘いの日々、移植手術を受けた彼の心臓の…