『チョコレート・ウォー』ロバート・コーミア

「今まで読んだ中で、一番好きなYA作品は何か」という問いには正直決めかねてしまうが、「最も印象に残った作品は」と問われれば、私は即座にロバート・コーミアの『チョコレート・ウォー』を挙げるだろう。
『チョコレート・ウォー』は、私がYAにのめり込むきっかけとなった、忘れられない一冊だ。

舞台は、男子校・トリニティ学院。
運営資金調達のためにチョコレート販売の奨励(という名の強制)が生徒たちになされる中、一人の少年だけが拒絶する。
本書は、この少年が、学校と校内の秘密結社の二つの組織に反旗を翻し、決然と戦いを挑んでいく様子を、さまざまな立場の人物の視点で描いた物語である。

巧みな人物造形と緊密な文体に、最初からぐいぐい引き込まれ、一気に読み終えた。
コーミアは、一人一人の登場人物が抱く弱さ・苦悩・とまどい・恐れ・自尊心を、リアルに描き出し、読み手は彼らの姿に自分を重ね、感情移入する。そして、少年が徐々に追いつめられていくにつれて、胸が締め付けられるような息苦しさを覚えるのだ。

この作品の衝撃的なラストは有名である。
そこには、「世界は善意に満ちている」という甘っちょろい絵空事は存在しない。作者は一切の妥協を許すことなく、子どもたちを取り巻く現実を真正面から見据える。
けれど、「所詮、世の中はこんなものさ」と割り切り、諦めている訳でもない。
救いのない物語を突き放すことができないのは、作者が、どん底に落ちたとしても、そこから必ず這い上がれる子どもたちの力を信じているからだと思う。

この作品が好きかどうかは、自信がない。しかし、これまで読んできたどの本にもなかった、強烈な印象を残したことは確かである。
連日のように報道されるいじめによる自殺を見聞きするたびに、私はこの作品を思い出してしまうのだ。[Amazon

The Chocolate War
Robert Cormier
The Chocolate War (Readers Circle)

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