『肩胛骨は翼のなごり』デイヴィッド・アーモンド

肩胛骨は翼のなごりなんて美しく、優しい物語なのだろう。
デイヴィッド・アーモンドの作品を読むと、「児童書」と「一般文芸書」に分けることが無意味に思えてしまう。『肩胛骨は翼のなごり』は、彼が子ども向けの本として書いたものだそうだが、あらゆる年代の人が読んでも深い感動を呼び起こす作品である。

主人公は、サッカーと作文の得意な少年・マイケル。両親と生まれたばかりの妹とともに、新しい家に引っ越したばかりだ。
物語は、彼が倒壊寸前のおんぼろガレージで、ある男と出会うところから始まる。〈スケルグ〉と名乗る謎の男は、薄汚れたスーツを着て髪はもつれ、背中には大きなコブがあった。やがて、マイケルと友だちの少女・ミナは、この不思議な生きものと深く関わるようになってゆく…。

〈スケルグ〉について詳しく書けば読む楽しさが半減するので、触れないでおいた方がよいだろう。
もっとも、結局のところ彼の正体は、読者の想像に委ねられているのだが。「スケルグとは何者なのか」との問いに答えることは、「神は存在するのか」との問いかけと同じくらい難しい。
本書の魅力は、ごく普通の少年の日常に、〈スケルグ〉という不可思議な存在を加えることで、リアルで幻想的なファンタジーに仕上げているところだ。

「奇跡」という言葉を安易に使うことは抵抗があるのだが、本書は私たちのいる世界が輝きや喜びや不思議な力で満ちていることを感じさせてくれる一冊である。
アーモンドは、けっして説教がましく多くを語らない。けれど読み手は、スケルグの存在や、人間にも翼があった(もしくは今もある)ことを、「もしかしたら…」と想像してしまうのである。
また、マイケルが、どこにいても常に病気の妹の心臓の鼓動を感じている場面は、彼の優しさを描いているだけでなく、すべての生きものが繋がっていることも教えているのではないだろうか。それが、この作品をあたたかく優しいものにしているのだと思う。[Amazon]

イギリス:山田順子・翻訳

Skellig
David Almond
Skellig

  1. コメントはまだありません。

  1. トラックバックはまだありません。