『黄色い目の魚』佐藤多佳子
日本のYA作家といえば、あさのあつこ、森絵都、上橋菜穂子などが有名だが、このジャンルの先駆けともいえる佐藤多佳子の存在を忘れてはいけない。
彼女は、『サマータイム』、『イグアナくんのおじゃまな毎日』など、10代の少年少女たちの日常を瑞々しい感性と爽やかな筆致で描き出している。本書は、その実力が遺憾なく発揮された青春小説である。
本書は、木島悟と村田みのりという二人の高校生男女が主人公の連作短篇集だ。
最初の方で、彼らの小・中学生時代の話が描かれているが、それが「今」の二人を形成したエピソードとして重要な意味を持っている。
二人は、真っ直ぐで強い心の持ち主。
しかし、そのために不器用でうまく生きられない。家族にさえ自分の気持ちを分かってもらえないもどかしさや、感情を素直に相手に伝えられない難しさ、将来への不安・焦燥感といった青春の苦悩を、彼らは自分の中で持て余してしまっているのだ。
そんな二人が、「絵」を通して深い信頼関係で結ばれていく。それは、友情と呼ぶには深すぎて、恋愛と呼ぶには幼い、微妙な感情だ。
大抵の人は、(ボディ・ランゲージを含めた)言葉をキャッチボールすることによってお互いの気持ちを分かり合うが、彼らの場合、絵を描く作業こそが、思いを伝える一番の手段であり、言葉なのだ。彼らの間には、常に絵が存在している。まるで空気のように。
残念なのは、表紙が作品の世界を台無しにしてしまっていること。
べったりとした色で描かれた「イマドキの高校生」風の高校生のイラストは、物語の魅力を本当に理解しているのか、疑問だ。単行本の、鉛筆を淡いタッチで描いた表紙の方が、二人の微妙な関係や感情をうまく表現しており、ずっと良い。[Amazon]



はじめまして。
こちらのページにたどり着いて色々と拝見させてもらっていたのですが、「黄色い目の魚」の文庫の表紙に関して、自分も全く同じことを感じたので、同じ意見の人を発見し嬉しくなってしまい思わずコメントしちゃいました。
自分も表紙の2人はイメージが合わなかったです。
佐藤多佳子さんは今年に入って、
作品の映画化、本屋大賞と一気にメジャーになりましたね。
またちょくちょくお邪魔させてもらいますね。
コメントありがとうございます。
単行本の表紙を格別気に入っている訳ではないのですが、文庫本はちょっと・・・。
書店にこの本が並んだ時、誰も反対する人はいなかったのか!と突っ込んでしまいました。
佐藤さん、本当にメジャーになりましたよね。
少し前なら「佐藤多佳子が好き」と友だちに言ったら「誰それ?」と返されていたのに。
黄色い目の魚―佐藤多佳子
学生の頃、年上の女性に「恋愛は学生時代に満喫していた方がいいよ。社会人になったら『好き』って気持ちだけで付き合えないからね」と言われたことがあります。
自分が社会に出る…