『黄色い涙』永島慎二
- 永島慎二
- マガジンハウス
- 1260円
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書評
おそらく、嵐主演で映画化されることがなければ、この作品も作者の名前も知らないままだっただろう。
舞台は、昭和43年の阿佐ヶ谷。
そこで暮らす青年漫画家の部屋に、画家や小説家志望の若者が集まってきて奇妙な共同生活が始まる。
この作品では、若者たちの出会いと交流、そして別れを描いている。
本書には、11の物語が収められているのだが、全編に昭和の匂いが漂う作品である。
お金がない、世の中に才能を認められない、女にはもてない。ないない尽くしの芸術家志望の男たちの生活は、読んでいるとだんだん物悲しい気持ちになってくる。
服を質に出して外出できず、歩いている犬を「うまそう」と思い、緊張で好きな女性とまともに会話できない。滑稽さの中にも常に哀愁がつきまとうのだ。
登場人物たちは、現実と理想とのギャップに終始悶々と苦しむ。けれど、なぜか不幸には思えない。それは、苦悩や喜びを共有できる仲間がいるからなのだろう。
同世代で同じような体験をした人にはたまらない作品なのだろうが、私にはそれほど面白いと思えなかった。帯に書かれた「永島慎二の最高傑作」には、疑問。そのぶん、現代の若者である嵐がどう演じるか、楽しみでもあるのだが。
ただ、「大事なことは共闘するというムードより」「場所はちがっても個人が闘うことで」「やはり闘っている仲間がいるということを知ることだと思いますね」というセリフには、痺れた。[Amazon]
※本書は、本が好き!経由で献本していただきました。

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