『ダブルハッピネス』杉山文野

ダブルハッピネス

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書評/ルポルタージュ

少し前から、『友達の詩』という歌が話題になっている。本当の気持ちを心に秘めて相手を想う歌詞を、澄んだ声で歌いあげた、切ない曲である。
この歌が多くの人に感動を与えたのは、曲自体の素晴らしさとともに、「性同一性障害」をカミングアウトした歌手の生き方にもあるのだろう。

本書は、同じように性同一性障害を抱えた杉山文野さんが、自身のこれまでの半生や思いを綴った一冊である(表紙の写真を見て、双子の物語だと勘違いしていた)。
気持ちは「男」なのに体は「女」。この違和感は、ずっと著者につきまとう。
本書では、生理が来た時の絶望感から、セーラー服を着て通学した恥ずかしさ、フェンシングに没頭した日々、初めてできた彼女との別れ、友達や家族にカミングアウトした日、そして大学院生の今に至るまでを、赤裸々に語っている。
苦悩や悲哀を笑い飛ばしてしまうようなテンポの良い語り口は、読んでいてとてもすがすがしい。

しかし、そんな明るく前向きな杉山さんが、自身のセックスについては苦しい胸の内を吐露しており、印象的だ。「強がるのはもう疲れた。辛いよ。これでもけっこう辛いんだよ」という言葉は弱々しく、著者の素の部分が読み取れる。
それでも、と思う。自分の弱さを認めて全てをさらけ出しているからこそ、いっそう著者の強さが伝わってくるのだ。自身が苦しんだぶん他人の痛みが分かる杉山さんは、男とか女とか関係なく、魅力的な人間に映る。
ちなみに、本のカバーをはずして驚いた。著者の語る「女体の着ぐるみを身につけているかのような感覚」を見事に表現した装丁だ。

本書は、「性とは何か」、「障害とは何か」、「生きるとは何か」ということを深く考えさせられる一冊である。著者の提唱する「27の性別」は極端だと思うが、多様性を認めるという趣旨には共感できる。
問題は、性同一性障害にあるのではない。本当に問題なのは、自分とは違う異質なものを認められない人間の心の偏狭さにあるのではないか。最後に著者が投げかけた、「障害ってなんだろう?」との問いが、今、私たちに突きつけられている。[Amazon]

本書は、本が好き!経由で献本していただきました。

  1. どもども、フミノです。たまたま発見したのでおもわず書き込みっす。ご紹介ありがとうございました~

    • ぐら
    • 2006年 12月21日 7:13pm

    こちらこそ、ありがとうございます。著者ご本人からコメントを頂けるなんて!
    この本に勇気づけられました。たくさんの人に読んでほしい一冊です。

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