『なまくら』吉橋通夫
本書は、ヤングアダルト向けの作品で、時代小説が7篇収録されている。時代はだいたい幕末から明治初めの頃で、どの短篇も10代の少年が主人公だ。
激動の時代と、心身ともに子どもから大人になりつつある少年たちの姿とが、「変化」という面でうまくシンクロしている。
彼らは働き、貧困に苦しみ、己の境遇を憂い、弱い心に負けそうになりながらも歯を食いしばって必死で生きる。その姿がいじらしく、彼らに救いの手を差し伸べる大人が現れると、胸が熱くなってしまう。
例えば、「灰」の中の、盗みを働いた少年に染めもの屋の職人が諭す場面。
「おまえら子どもの前には、何本もの道がひろがっとるんや。 (中略) 生きていく道や。もし道をまちごうたと思うたら、思いきって引き返し、べつの道をいくことや」
自分を信じてくれる人間がいる―。それだけで、どんなに人は救われることだろう。
本書には、こうした説教じみたところがいくつも出てくるので、最初私は「いかにも子ども向けに書かれた本だな」と冷めた目で見てしまった。でも読み終えて、そこには筆者の暖かい眼差しが注がれていたことに気付き、心が洗われる思いがした。
勇気を出して「今、この時」を精一杯生きれば道は開けるのだ、とポンと背中を押される一冊である。[Amazon]



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