『にょっ記』穂村弘

にょっ記「日記」ではなく、「にょっ記」。
このタイトルから分かるように、本書は少々(かなり?)変わっている。歌人・穂村弘が思いつくまま、気ままに書き綴った一年間。「○月○日」と、日記の体裁を取っているが、この作品はエッセイという方がふさわしいだろう。それとも、小ネタ集か。

私が穂村弘作品を読むのは、これが初となる。“歌人”という言葉から、優雅で、美しい文章を書くのだと思っていたから、意外だった。
むしろ、本書の筆者が“落語家”と言われた方が、すんなりと納得できるような気がする。なにしろ、内容が「ヘン」なのだ。まるで小噺のようにくすりと笑えて、読み始めたら止まらない。

街中でふと耳にした会話や、思い出、夢で見たこと、妄想など、事実と虚構が巧みに入り混じった文章が、淡々と綴られている。
大抵はオチや結論のない内容で、静かにフェイドアウトしていく。その奥ゆかしさゆえだろうか、続きがなぜか気になってしまう。
「あるある」と共感できるものから、筆者の感性(妄想?)が光るものまで、一日の日記の中に、「人間の可笑しさ」がギュッと凝縮されている。

ただ本書に、人生の教訓や、生きる意味などを求めてはならない。冷静に考えれば、「だから、どうした」的な内容なのだから。
しかし、この肩肘張らない力の抜け具合が、ちょうどいいのだ。疲れた時読むと、乾いた心に潤いをもたらしてくれる。
こんな風に、慌しい日常から離れ、一冊の本に身をゆだねてゆるりと過ごす時間というのも、悪くない。[Amazon]

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