『宮部みゆきの江戸レシピ』福田浩

宮部みゆきの江戸レシピ時代小説に出てくる食べものって、なんであんなに美味しそうなのだろう。
和食、中華、イタリアン、フレンチ、東南アジア料理・・・。私たち日本人は、日本にいながらあらゆる国々の料理を食べることができる。
江戸時代に比べて現代の方が、料理の種類や数は圧倒的に多いのに、なぜか、物語の中に出てくる素朴だけど、素材の活きた食べものの描写に、心奪われてしまうのだ。

もっとも、作家の表現力の巧さが、料理の美味さを引き立てている、ということはいえる。
食べものの描写に秀でた作家は数多いるが、何といっても、池波正太郎が真っ先に頭に浮かぶ。作家自身が食を愛しているからこそ、あれほど読者の心を打つ表現ができるのだろう。

さて、宮部みゆきの時代小説の中にも、たくさんの食べものが登場し、物語に彩を添えている。
これまで、出来上がった料理の見た目や味は、想像して楽しんでいた。それが実際、料理人の手によって作られるとは、宮部ファンならずとも嬉しい。
『あかんべえ』の、白と黒の料理対決では、趣向を凝らした料理が見開きいっぱいに広がっており、圧巻である。そして、料理人の工夫や苦心の跡、味の感想などが解説されており、読み物として楽しめる。
面白かったのが、穴子の身をほぐして作った「穴子豆腐」が、小説の中では美味しそうなのに、作ってみると穴子の個性が強すぎて、イメージと違ったこと。
『日暮らし』の、ゆで卵の黄身を満月に見立てた椀物・「名月椀」は、お椀の中に秋の自然が閉じ込められているような、風流な一品だ。小説を読んでいた時に、あれこれ想像していたので、実際目にして感慨深かった。

もう一度、宮部みゆきの時代小説を読み返したくなる一冊だ。
ただ、タイトルに「レシピ」と書くのは、誤解を招くのではないだろうか。本書では、材料や作り方は載せられていないのだから。[Amazon]

関連する(かもしれない)記事

  1. コメントはまだありません。

  1. トラックバックはまだありません。