『ひねり屋』ジェリー・スピネッリ

ひねり屋黒い背景に浮かびあがる、黄色い線で描かれた鳩。ぎょろりと丸い目がこちらをじっと見つめている、印象的な表紙である。
タイトルは、「ひねり屋」。ひねり屋とは、鳩の首をひねる者のことを指す。

舞台は、アメリカのとある田舎町。
そこでは毎年伝統行事として、「鳩撃ち大会」が行われている。公園維持費という名目のもと、大量の鳩がシューターたちによって撃ち落とされ、殺し損ねた鳩は“ひねり屋”と呼ばれる少年たちによってとどめをさされるのだ。
主人公・パーマーは、9歳の誕生日を迎えたばかりの少年。1年後には参加しなければならない“ひねり屋”になるのが嫌でたまらない。けれど、この町でひねり屋を拒否すれば、意気地なしのレッテルを貼られ、友だちも失ってしまう。そんな時、一羽の鳩がパーマーのところへやって来て…。

可愛らしいタイトルとは裏腹に、内容は深刻なものである。本書では、野蛮な風習に適応できない心優しいパーマーの、苦悩と精神的成長が描かれている。
「異常」な環境のもとで、「正常」でいることの難しさは、何もこの物語に限った特殊なものではない。
例えば、戦争。例えば、学校でのいじめ。「おかしい」と心に思っていても、「ノー」と声に出して言うことは至難の業だ。それには、勇気をふりしぼって戦う覚悟がいるから。
「鳩撃ち大会」という耳慣れない行事を描いた作品だが、年齢を問わずあらゆる世代の人々が共感できる物語である。

スピネッリは、パーマーの揺れる内面を巧みに描き、スリリングな構成で読者を最後まで飽きさせずぐいぐい引き込んでいく。
孤立するのを恐れて、自分を偽り周りに合わせて毎日を過ごしていたパーマーが、一羽の鳩との出会いをきっかけに少しずつ変わっていく姿に、勇気を与えられる一冊である。[Amazon]

アメリカ:千葉茂樹・翻訳

Wringer
Jerry Spinelli
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