『クロニクル千古の闇1 オオカミ族の少年』ミシェル・ペイヴァー
『ハリー・ポッター』が大ベストセラーになってから、出版社は「ファンタジーものは売れる」と踏んだのか、次々とファンタジー本が世に送り出され、今や専用の棚が備え付けられた書店も少なくない。
ただ、魔法、ドラゴン、妖精といったものが溢れすぎて少々食傷気味の感は否めない。
本書は、私のように「ファンタジーはもういいや」と思っている人こそ楽しめる作品である。
舞台は今から6000年前(の、おそらくヨーロッパ北西部)。物語は主人公の少年の父親がクマに襲われて瀕死の状態、というショッキングな場面から始まる。
おもしろい本とそうでないものとを分ける基準はいくつかあるだろうが、出だしの文がおもしろくない本は、必ずといっていいほどつまらない。その点、本書は最低限の条件をクリアしているといえる。
その後、少年は悪霊に取り憑かれたクマを倒す旅に出る。その途上で仲間を得、さまざまな試練を克服しながら成長していく。
とまあ、あらすじだけ読めばありがちな話だが、本書の魅力はそうした骨格より細部にあるといっても過言ではない。
狩りの様子、仕留めた獲物を全く無駄にすることなく使い切る見事さ、氏族の生活、自然や生き物に対する畏敬の念・・・。筆者が文献を調べるだけでなく自分であちこち出かけていって実地に体験したからこそ伝わる、物語の世界が広がっている。
6巻シリーズの第1巻である本書は、次回作を十分に期待させる作品である。[Amazon]
イギリス:さくまゆみこ・翻訳
Wolf Brother (Chronicles of Ancient Darkness)
Michelle Paver




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