『クロニクル千古の闇2 生霊わたり』ミシェル・ペイヴァー
川の向こう側の林の間から、とつぜんオーロックス(ウシの原種。絶滅して今はいない)があらわれた。
冒頭の一文を読むと、そこには6000年前のヨーロッパ世界が目の前に広がっている。本を開けば、21世紀の日本にいながらにして、やすやすと物語の世界へとトリップすることができるのだ。
前作で既に証明済みだが、ペイヴァーの筆力には、本当に唸らされる。一度文章を読んでしまうと、物語に引き込まれ、本を置くことができない。圧倒的なリアリティある描写、巧みな構成、魅力的なキャラクターや神秘的な現象に読み手は魅了され、400ページを超すボリュームを一気に走り抜けてしまうのだ。
二作目となる本書も、期待を裏切らず、おもしろい。
本書では、トラクの父親が殺された理由や、トラクの能力、ウルフの使命、<魂食らい>の正体など、前作を読んだだけでは分からなかった謎が、徐々に明かされていく。
本書に登場する“魔力”には、他のファンタジー小説とは少し雰囲気が異なる。人為的な、何かを支配する力ではなく、生きものに対する敬意から湧き上がる力のように感じられるのだ。
人々が狩りをして生活していた時代は、技術が進んだ現代より、本書のように人間と自然が一体となっていたのだろう。あらゆるものに魂が宿る、という思想から来る魔力には、安っぽさはなく、すんなりと受け入れることができるのだ。
本書では、アザラシ族という新しい部族が登場し、海での人々の暮らしぶりを読むことができるのが、楽しい。
さまざまな人たちと出会い、困難を潜り抜けて少しずつたくましくなっていくトラク。今回は、トラクと狼のウルフが一緒にいる場面は少ないが、彼らの結びつきはさらに強固なものとなっていき、今後の展開をあれこれ想像してしまう。続きがますます楽しみとなり、今後も目が離せない。[Amazon]
イギリス:さくまゆみこ・翻訳
Spirit Walker (Chronicles of Ancient Darkness)
Michelle Paver




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