『わが悲しき娼婦たちの思い出』G・ガルシア=マルケス

わが悲しき娼婦たちの思い出

  • ガブリエル・ガルシア=マルケス
  • 新潮社
  • 1890円

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書評

主人公は、まもなく90歳になろうとする年老いた男性。
馬面で冴えない風貌ながら、並はずれた性的能力の持ち主で、過去にたくさんの娼婦たちと関係を持ってきた。妻子はおらず、長年新聞社の外電屋を務めた今は、日曜版のコラムだけを書いて暮らしている。
物語は、この男性が自分の誕生祝いとして、「うら若い処女を狂ったように愛」そうと考え、昔馴染みの娼家を営む女主人に依頼するところから始まる。この書き出しの一文が、かなりのインパクト。

一読した時は、平凡に生きてきた男が90歳にして初めて真剣に女性を愛することを知った「恋愛小説」という印象を受けた。
けれど、本書を単純に「恋愛小説」と言い切ることに違和感を覚え、再読したところ、この作品は男性側の視点しかないということに気づいた。
言葉をかけ、愛撫し、思いを募らせ、嫉妬に胸を焦がす。これらはすべて主人公の行為である。一方の少女は、まるで「眠れる美女」のごとく静的な存在だ。作中少女が言葉を発するのは、「カタツムリを泣かせたのは、イサベルだったのよ。」と怒ったように言う場面だけ。それも寝言のような、意味不明な言葉である。
一人称で書かれた小説であっても、恋愛相手の発言場面がないのは珍しい。こんな一方的な行為を、果たして「恋愛」と呼べるのだろうか。

だから、私にはこの作品の主眼は、男の「老い(もしくは生)」に置かれているように思うのだ。未来を夢見るのではなく、残された時間がわずかだと悟る年齢を迎え、男は今一度人生の意味を模索する。このまま死んでいいものか。ただ毎日をつつがなく過ごすのが「生きている」といえるのか、と。
いわば、90歳の誕生日が主人公のターニング・ポイントといえる。作中の言葉を借りるなら、90歳を境に「くるりとひっくり返されて、さらに九十年かけてじっくり焼きあげられる、そういう機会が与えられ」、また男は新たな人生を始めるのだ。

この作品が、男女のエロスを扱いながらちっともいやらしく感じないのは、南米特有のカラリとした気質も関係しているだろうが、「性」イコール「生」として描かれているからではないだろうか。
わずか120ページ程度の中篇ながら、さまざまに解釈のできる幅と奥行きのある作品である。[Amazon]

コロンビア:木村榮一・翻訳

本書は、本が好き!経由で献本していただきました。

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  1. 『わが悲しき娼婦たちの思い出』 by G.ガルシア=マルケス

    「ガブリエル ガルシア=マルケス Gabriel Jos醇P Garc醇^a M醇@r

    • Gori
    • 2007年 1月21日 7:57pm

    はじめまして! "本が好きPJ" No.79 Gori と申します。
    この作品は、私の最近の読了本の、文句なしのナンバーワンです!
    上手く表現できていませんが・・・
    その後に、川端康成「眠れる美女」を読了し、著者の「百年の孤独」を本日手にし、そして「コレラの時代の愛」を手配中です(笑)!

    • ぐら
    • 2007年 1月22日 8:48pm

    コメントありがとうございます。
    深いテーマをシンプルな文章で表現しているところに、作者の力量を感じました。
    他の作品を読みたくなる気持ち、分かります。

  2. TBさせていただきました。
    面白かったです。ちょっと物足りない気もしたけれど。

    • ぐら
    • 2007年 2月22日 8:50pm

    あれ?TBされてない・・・。
    この作品は、ネット上にもたくさんレビューが出てますよね。
    今年は、ガルシア=マルケスブームが起こるかも。

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    ? ガブリエル・ガルシア=マルケス, 木村 榮一訳 わが悲しき娼婦たちの思い出 ★あらすじ90歳になる主人公が14歳の生娘の娼婦のもとへと通う。眠ったままの彼女をなでたり、さすったりで主人公は愉しむ。やがて、主人公は少女への恋わづらいで心ちぢ

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