『昆虫にとってコンビニとは何か?』高橋敬一
「昆虫にとって○○とは何か?」という28項目の問いかけによって、昆虫とそれを取り巻く文明の関係を探った一冊。
著者は、自称“カメムシ採集人”の農学博士。本書で書かれている「昆虫マニア」とは、他ならぬ著者自身のことであろう。珍しい昆虫を求めて日々採集と研究に励んでいる。
表題の他、「車とは何か?」、「小さな公園とは何か?」、「昆虫マニアとは何か?」、「生まれてきた目的とは何か?」等、昆虫に対しての○○の意味を問いかける章タイトルとなっているが、著者の眼差しは、○○の背後にいる私たち人間に向けられている。「○○とは何か?」と掲げつつも、昆虫に対する影響力としてはそれほど重要視しておらず、逆説的に持論を展開しているのだ。
例えば、執拗に自分たちを追い求める昆虫マニアは昆虫たちにとって憎むべき相手であるが、人家や、オフィスビルや、道路や、ゴミや、汚染された空気などを作り出す、ごく普通のありふれた人間たちの方が本当は脅威だと、著者は述べる。
最初は、「なるほど」と納得しながらおもしろく読み進めることができた。しかし数章読むと、問いかけは異なっても導かれる結論が同じなので、少々うんざりしてくる。結論は最終章で述べれば十分なのではないだろうか。この切り口なら、もっとおもしろく書けるはず、と残念である。
もっとも、舌をかみそうな名前とともに写真付きで紹介される昆虫のコラムは、ユーモアたっぷりで、昆虫への愛情が伝わってくる。著者の筆は、単純に昆虫の生態を書いている時の方が生き生きとしていると思う。「昆虫にとってペットの糞とは何か?」の、糞虫のエピソードには思わず笑ってしまった。
著者の言うように、ことさら「エコ」を振りかざす“自然保護主義者”の主張には私も共感できない。
けれど、人間が引き起こしている急激な環境変化と、これまでの進化の過程を同列に扱っていいものだろうか。たとえ変化の中で新種の生物が生まれてくるとしても、私たちが現在享受している利便性を手放すことが困難だとしても、楽観視してもいいということにはならないと思うのだが。[Amazon]



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