『墨攻』酒見賢一

墨攻 (新潮文庫)墨攻映画『墨攻』を観に行った。
戦闘シーンは迫力があり、見ごたえ十分。主演のアンディ・ラウは熱演。戦争の残酷さ・愚かさが伝わってくる作品で、それなりに良かったのだが、もっと面白く描けたのではないか、とも思う。
「はい、カット!」と、ワンシーンごとに撮っているメイキングが想像できてしまうような展開だった。
それに、女剣士とのラブロマンスはいらないだろう(女優さんは綺麗だったけれど)。別に登場人物が男ばかりでも問題なかろうに。その時間を、もう少し人間を描くことに費やしてほしかった。墨者・革離の戦略や、「墨家」の思想が、この映画では伝えきれていないのが残念。

墨攻 (1)さて、この『墨攻』は、日本の同名小説が原作である。
漫画化もされていて、人気を集めているとのこと。
以前からタイトルと著者名は知っていたが、いつか読もうと思いながら先延ばしにしていた。今回、映画を観た帰りに書店へ寄り購入、一気に読んだ。

わずか150ページ程度の短い小説ながら、内容は濃い。
時は、春秋戦国時代の中国。
群雄割拠する中、「墨家」と呼ばれる思想集団がいた。「兼愛」「非攻」を提唱した墨子の教えを受け継ぐ教団で、高度な軍事技術を持つ戦闘集団でもあった。博愛主義ともいえる哲学のもと、侵略されそうな国を無報酬で救援し、徹底した専守防衛戦を繰り広げる。
本書は、墨子教団の俊英・革離を主人公に、大国・趙の攻撃から小国・梁を守る墨者の活躍を描いた物語である。

一時は孔子の「儒家」より大きな勢力を有していたにも係わらず、忽然と歴史から消え去った「墨家」。この謎に包まれた集団を、数少ない史実と独自の推論を織り交ぜながら、作者はダイナミックに描いていく。
タイトルの「墨攻」とは、作者の造語である。墨家の守衛戦術の堅さから生まれた熟語・「墨守」をもじったものだ。自らは攻めず守るのみに徹するとはいえ、襲い掛かる敵は容赦せず叩きのめす。戦争を否定する思想なのに、日夜、戦術・兵器の工夫を重ね傭兵となって戦闘に赴く、という矛盾が、物語だけでなくタイトルからもひしひしと伝わってくる。
とはいえ、墨者・革離が次々と用いる策略には唸らされる。同時期の日本(弥生時代)と比べると、その文明の高さがよく分かる。

戦国時代を描いた小説だから、多くの兵士たちが死んでいく。それなのに、南伸坊の挿絵だと、なんだか楽しそうに見えるから複雑である。[Amazon]

  1. 墨攻

     昨日の夜は、映画「墨攻」の試写会だった。 小国梁は、趙の大軍に攻め込まれようとして、墨家に助けを求める。墨者の革離は、一人梁城に乗り込み、梁軍を指揮して、趙軍を撃退するが、革離の人気を妬んだ梁王とその取り巻きたちに裏切られる。 ちなみに、墨家は、中国…

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