『ドリームボックス 殺されてゆくペットたち』小林照幸

ドリームボックス―殺されてゆくペットたち辛くて、苦しくて、読み終わるのに時間がかかってしまった。
数ページ読んでは本を置き、また数ページ読んで・・・というゆっくりしたペースなのに、どっと疲労感が押し寄せてくるのだ。

年間およそ40万匹。
これは、日本で殺処分されている犬や猫の数である。
飼い主の飼育放棄や、野良犬を理由に「引き取り」「捕獲・保護」された犬猫の多くは、最終的に県内の動物愛護センターに運ばれてくる。そして、収容された動物たちの大部分は、殺処分される。

本書は、とある県の動物愛護センターの日常を通して、ペットブームの裏側で人知れず死んでいく動物たちの現状を追ったルポである。著者が県名を伏せているのは、取材先に配慮したこともあるだろうが、これが特別なことではなくどの県でも同じようなことが行われているからに他ならない。

タイトルの「ドリームボックス」とは、動物愛護センターの職員たちが呼んでいる鉄箱のこと。
ここに、殺処分する犬猫を押し込めて炭酸ガスを注入し、窒息死させるのだ。そこには、「眠るがごとく死んでほしい」という願いが込められている。夢のある名前とその実態との大きな差は、あまりにも悲しく、腹立たしい。
もちろん、直接的に手を下す職員の方たちに否があるのではない。本書は、ある獣医師資格を持つ職員を通して語る形式を取っている。「愛護」を謳いながら、その実、多くの犬猫を殺処分している施設で働く人たちの苦悩や葛藤が、痛々しいまでに伝わってきて、彼らもまた犠牲者なのだ、と思った。

中でも、収容される動物たちの多くが元はペットだった、という事実に驚いた。
物質的に豊かになった現在の日本は、消費社会の一面を持っている。欲しいものを買い、いらなくなったらすぐに捨てる。物なら、それでもまだ許されるかもしれない。けれど、無責任な飼い主に捨てられた動物たちの命は、甦ることはないのだ。
折りしも、テレビでは「“崖っぷち犬”の飼い主が決まった」というニュースが流れていた。「たかが一匹のことで」とは言わない。しかし、皆がその話題で盛り上がっている間にも、ひっそりと多くの犬猫が死んでいることを忘れてはいけないと思う。[Amazon]

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