『薄闇シルエット』角田光代
- 角田光代
- 角川書店
- 1470円
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書評
古着屋を経営していているハナは、37歳の独身女性。
仕事もプライベートも順調で、自分の人生にそれなりに満足していた彼女だったが、周囲の人間が自分とは違う道を歩もうとするのを見て、徐々に焦りを感じ始める。恋人のタケダくんは、結婚を二人の幸せのかたちと信じて疑わず、共同経営者のチサトは、新しい事業に乗り出す。
前進も後退もすることなく、このままの状態でいることの何が悪いのか。学生時代の「ごっこ遊び」の延長の、何が悪いのか。なぜ、性急に何かを選び取らなければならないのか。ハナは、駄々をこねる子どものように「変わりたくない」と訴える。けれど、友達との距離が開いていくにつれて、ハナは自分なりの人生を模索し始めるように・・・。
角田光代作品の魅力は、まるで自分のことが書かれているかのようなリアルな人物描写にあると思う。
本書を読みながら、私は何度も「分かる、分かる」と共感できた。自分の中にあるもやもやした感情に言葉が与えられたような、心地よさがあるのだ。
自分がよしとする人生を選んできたはずなのに、「もしかしたら他の人生があったのでは」という思いも捨てきれない。周りが皆幸せそうに映り、自分より多くのものを持っているのではないかと不安になる。比べても仕方がないと思いつつも、他人の芝生が青く見えてしまうハナのうじうじ悩む姿を、作者は丹念に描いていく。
「もっとすごくなりたい」と新たな一歩を踏み出そうとするチサト、手作りのもので家族を満たすことに躍起になっていたハナの母親、そんな母のように完璧な主婦にもキャリアウーマンにもなれず鬱屈した思いを抱えて子育てをする妹のナエ、今まで避けてきたことと真正面に向き合うことを決意したタケダくん。
誰の生き方が正解なのかは、分からない。本書には答えは書かれていないから。ただ、さまざまな思いを抱えながら失い、選び取っていく人々の姿が描かれるだけだ。
けれど、登場人物の姿を通して(中には反面教師にしながら)、読者は自分の生き方を見つめ直すことができる。
世間では、「勝ち組・負け組」という言葉で人間を二分化しようとする傾向にある。
結婚すれば「勝ち」なのか。それとも、仕事ができれば「勝ち」なのか。人生はそんな単純なものではないだろう。本書を読んでそう思った。
今、人生に惑うすべての人に手に取ってみてほしい一冊である。[Amazon]
※本書は、本が好き!経由で献本していただきました。

薄闇シルエット

薄闇シルエット [角田光代]
薄闇シルエット角田 光代 角川書店 2006-12livedoor BOOKSで購入書評データ_uacct = "UA-918914-3";urchinTracker();下北沢で古着屋を友人と共同経営しているハナ。ある日、恋人から「結婚してやる」と言われ、小さな違和感を感じる。「どうして、この人は『私が
こんにちは!『勝ち組・負け組』私も同感です。そんなんじゃないって、そのことをこんなにも角田さんが伝えてくれてるんだから、私もその言葉に惑わされるのはもうやめようって、なんかそんな風に思いました。いい本でした!
chiekoaさん、コメントありがとうございました。
「薄闇シルエット」というタイトルが、すとんと自分の中で落ち着くラストでした。
これからも、よろしくお願いします。
角田光代「薄闇シルエット」
私は自分の人生に不満を持ったことがないような気がする。それは、私自身がものすごーく恵まれているといったことではなくて。いや、そこそこ恵まれているということになるのかもしれないけれども。・ ・なんていうか、人と比べて自分はどうなのだろう?と考えるタイプ…
私もトラバさせていただきますね♪
私は・・あんまり惑わないというか、たいした生き方をたとえして
いなくとも、自分のやりたいようにいつもやっているような気がする
ので、ハナを見ていて、とってもまどろっこしかったです(哀)。
ほんと、そんなんしてたらあっという間におばあちゃんだよって。
でも多かれ少なかれヒトは誰でも矛盾した気持ちを抱えていて。
そういうのをリアルに描いていますよねえ、角田さん。うまいなあっ
て思います。
Maさん、 コメントありがとうございました。
>私は・・あんまり惑わないというか
そうですか。私は今、惑いの真っ只中にいるもので・・・余計心にずしりときたのかもしれません。
でも、チサトやキリエの生き方にも共感できるんですよね。
>角田さん。うまいなあって思います。
同感です。これといった出来事が起こるわけじゃないのに、読ませます。
薄闇シルエット<角田光代>-(本:2008年98冊目)-
薄闇シルエット
出版社: 角川書店 (2006/12)
ISBN-10: 4048737384
評価:88点
42歳・男・会社員の私が読んでも主人公に共感してしまうのはなぜか。
37歳独身女性の主人公は、それなりに忙しい日々を送りながらも、人生に対してがっつり取り組んで勝ち抜こうと、…