『知られざる素顔の中国皇帝』小前亮
- 小前亮
- KKベストセラーズ
- 735円
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書評/歴史・記録(NF)
先日、映画『墨攻』を観に行った。
映画の出来とは関係なく、日本では土器を作っていた時代に高度な軍事技術・思想を持っていた文明の差と、CGを使わずに本物の人間で大軍を作れてしまう人口の多さに、中国という国のスケールの大きさを見せつけられた思いがした。
本書は、この中国歴代皇帝(百を軽く超えるといわれる)の中から28人を選び、さまざまな角度から光を当て、その人物像を探った一冊である。
ただ、タイトルの「知られざる」は少しオーバーだろう。中には馴染みの薄い人物も登場するが、ほとんどは有名な皇帝たちで、治績はよく知られている。また、本書で書かれていることが、本当に皇帝たちの「素顔」なのかは、過去へ行って直接本人に会ってみない限り、誰にも分からない。
本書の魅力は、中国皇帝のひととなりを知るだけではなく、著者が彼らをどう捉えているか、その解釈を読めるところにあると思う。
著者の小前亮氏は、歴史研究者から作家に転向された経歴の持ち主。研究に裏打ちされた「歴史家」としての目と、想像力を要する「作家」としての目という二つの目を活かして展開される生き生きとした人物伝は、エピソードに重点を置いていることもあり、読みやすい。
もっとも、ただおもしろいだけではない。
「始皇帝の死後、帝国が瓦解したのは必然で、むしろ、生きている間は保ちつづけたことに、始皇帝の偉大さを感じる。(P.30)」とさらりと書かれた一文には、「そういう見方もできるのか」と、思わず膝を打った。
「ひとつの解釈をおしつけるよりも」と述べているが、各人物につけられたコピーにしっかり著者の解釈が現れていると思うのは私だけだろうか。
例えば、前漢の劉邦は「偉大なる凡人」、隋の煬帝は「挫折した天才」、太平天国の洪秀全は「野望に焼かれた俗人教祖」など、それだけで各人のキャラクターが見えてくる。
「英雄としては、とか、民にとっては、などという視点で皇帝を評価するのもいいが、もう少し自分に引き寄せて考えるのはどうか。」と、あとがきで述べているように、威厳漂う肖像画から引っ張り出して人間くささを見せてくれるのが、本書の最大の特徴といえるだろう。歴史上の人物が、ぐっと身近に感じられるのだ。
もっとも、私は皇帝よりも、ちらちら登場する宰相たちの方に興味を持ってしまったのだが。名君の影に名参謀あり。いつか著者には、彼らを主人公にした小説を書いてほしいものである。[Amazon]
※本書は、本が好き!経由で献本していただきました。

知られざる素顔の中国皇帝

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