『コンテンツビジネスによく効く、著作権のツボ』八代英輝

コンテンツビジネスによく効く著作権のツボIT革命の到来に大騒ぎしていた数年前の日本で、インターネットで私たちの生活がどのように変わるか、さかんに議論された。売り手と買い手が直接売買でき、中抜き現象が起こる、情報発信の双方向性が生まれる、瞬時に情報が伝わることによって時間と場所の垣根を越え、グローバル化が進む等、さまざまな現象が指摘された。

中には予想がはずれたものもあるが、その中で、インターネットの普及により人々の知的財産権への関心が高まったことが、注目に値する。
これまでは、「知的財産」という言葉はなじみが薄く、権利に対するモラルも低いものだった。しかし、個人が自由かつ手軽に情報発信できるインターネットは、誰もが知的財産権の権利者にも、他人の権利の侵害者にもなる可能性を持っているので、もはや「知らなかった」では済まされない、必須の知識となっている。「これって著作権侵害じゃないの」というサイトを見るにつけ、今はネットの普及に人々の意識やルールが追いついていない過渡期なのだな、という印象を強く受ける。

本書は、知的財産権のひとつ、著作権について分かりやすくまとまっているものを読みたい人のための一冊である。
特に、著作権を経済的観点から、旬のコンテンツ・ビジネスに絞って解説しているので、ビジネスに興味のある人や、自分のサイト(ブログなど)を活用したい人は、一読して損はない。これからサイトを開設しようと思っている人には、本書に書いてある程度の著作権の知識は必要となるだろう。
また、ライブドアや楽天がテレビ局の株式を大量取得した目的や、キャラクター展開する前に絵本やアニメを作るメーカーの狙い、『電車男』の本当の権利者は誰か?など、皆の興味をひく話題を取り上げ、分かりやすく書いているので、単純に読み物として面白い。

ただ、「読み物として読みやすい内容にすることを優先した」と著者が述べているように、本書で著作権とコンテンツ・ビジネスの全てを学べるわけではない。あくまで入門書・導入本である。肩肘張らず、気楽に読むことができる点を評価したい。
だから、既にある程度の知識のある人は、本書から新たに得られる情報は少ない。ただ、活用やルール作りが刻々と変化している知的財産権の世界の「今」を知ることができるので、最終章の「著作権最前線」だけでも読む価値はあるだろう。
もっとも、本書が出版されてから一年近く経つので、ここで書かれていることはもはや「最前線」とはいえないのかもしれない。本書では、現在注目を集めているYouTubeやGoogleなどのネットサービスについて解説されていないため、不満は残る。[Amazon]

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