『空高く』チャンネ・リー

空高く (新潮クレスト・ブックス)主人公は、初老の男性。
家業である造園業を息子に譲り、自身はセスナ機での飛行を楽しむ。空を飛んでいる間は、開放的な気分になるが、地上に戻ると厄介な問題が彼を待ち受ける。
妻を亡くし、長く付き合っていた恋人は彼の元を去っていった。年老いた父はかつての輝きを失い、息子の経営は上手くいかず、娘は病に侵される。
空に飛び立つことで現実逃避していた男が、問題と真正面から向き合うようになり、地上での幸せを見つけていく。家族の崩壊と再生を描いた物語。

前作『最後の場所で』の落ち着いた語り口に比べて、本書は陽気でテンポが良い。
そして、これまでチャンネ・リーが一貫して描いてきた、人種の“アウトサイダー(よそ者)”意識は、本書ではそれほど問題視されていない。
本書で描かれるのは、世代や性別の異なる、家族一人一人の生き方だ。それぞれが自分の人生を歩んでバラバラだった家族が、次第にお互いを思いやるように。その再生していく様子が、丹念に描かれる。
作者は、登場人物の行動、性格や思想、心理など、手を抜くことなく丁寧に描く。特に、死んだ妻・デイジーの混迷と苦悩を描いた第4章は、美しく、悲しい物語だ。デイジーの死が、いまだ主人公と子どもたちの心に影を落としていることを考えると、この章は重要な意味を持って読者に迫ってくる。

本書で特徴的なのは、一文の長さ。前作も長めだったが、本書はそれに輪をかけて長い。最初はそれが作者の癖なのかと思ったが、作品全体にまんべんなく散らばっているところを見ると、意図的にこの文体を使っているのだろう。
ただ、読点でつないだ、畳み掛けるような文章は、感動を増幅させる効果があるが、本書では多用し過ぎでくどくなっており、うんざりさせられてしまった。

幸せは「空高く」にではなく、「地上」にあることを静かに訴える作者のメッセージが伝わってくる作品で、多数の人間の書き分けの巧さが光る。
ただ、家長である主人公が結局何をしたいのかがいまひとつ分からなかった。単に、私の読解力がないだけかもしれないが。[Amazon]

アメリカ: 高橋茅香子 ・翻訳

Aloft
Chang-rae Lee
Aloft (Lee, Chang-Rae)

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