『神童(全3巻)』さそうあきら
- さそうあきら
- 双葉社
- 600円
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書評
同じクラシック漫画ということで、『のだめカンタービレ』と比較されてしまうのは、仕方がないだろう。また、映像化されるという点でも共通している。
だから本書の書評には、いくらか『のだめ』が入ってくることを最初に断っておきたい。といっても、どちらがいいか選ぶためではなく、あくまで内容を分かりやすく伝えるための比較である。
ただ、発行年月日を調べてみると、この『神童』の方が、『のだめ』より先に出版されているのだ(『のだめ』1巻は2002年1月。『神童』コミックス版は1998年6月)。私は、本書を、『のだめ』のヒットを受けて、クラシックの分野に参入してきた漫画だと思っていたので、大変失礼な勘違いをしていたものである。
世間が『のだめ』に湧く数年前に、漫画界ではすでに音楽の土壌ができていた―。自分の浅薄さを恥じつつも、日本の漫画文化の質の高さを再確認させられた。
物語は、天才少女ピアニスト・成瀬うたと、音大浪人中で優れた聴覚を持つ菊名和音(ワオ)が出会う場面から始まる。
年齢・立場・性別の異なる二人が、「音楽」を通してつながり、心を通い合わせていく。作者が、「この漫画は『音』が主人公の作品です」と述べているように、本書は、二人の交流や取り巻く世界すべてを、「音楽」で表現した物語である。
『のだめ』が、「音楽」を「楽」しむ人間に焦点を当てた作品であるのに対し、本書はどちらかというと「音」そのものを描いた作品といえる。笑える度で言えば断然『のだめ』だが、内容の深さでは本書の方が高い。
もっとも、本書の登場人物も、十分に個性豊か―特に、うたの才能を信じてやまない母親のステージママぶりは苦笑もの―で、なかなか楽しませてくれる。
だが、やはり主役は「音」である。
最初の方はテンポが遅くてつまらなく感じるが、うたの奏でるピアノの音に刺激されて凡庸に見えたワオの才能が開花していくにつれて、物語のおもしろさが加速していく。そして、うたのオーケストラとの初共演のシーンで山場を迎え、感動のラストへと―。
タイトルや、音楽に無関係に見えた野球の場面の意味が、このラストを読んでやっと理解できるのだ。音楽とは、聴くだけでなく、「感じる」ものだということを、この作品は教えてくれる。
工業デザイナーの深澤直人氏が著書の中で、「輪郭を成す要因は、誰しもが共有している。だから、誰もが輪郭を既に知っている。ただ、それを自覚していないだけなのである」と書いていたが、デザインと同じことが音楽にもいえるのではないだろうか。
私たちの内部やこの世界(もっと広くいえば宇宙)には「音楽」が響き渡っており、その音を敏感に感じ取って外に表現できる者を、人は“神童”と呼ぶのかもしれない。[Amazon]
※本書は、本が好き!経由で献本していただきました。

神童![神童 [DVD]](http://images-jp.amazon.com/images/P/B000W6H230.09.TZZZZZZZ.jpg)


神童@さそうあきら
神童著:さそうあきら出版社:双葉社定価:600円livedoor BOOKS書誌データ / 書評を書く_uacct = "UA-918914-3";urchinTracker();神童ってテキストを打ってみて、ああ、振動(音が伝わる仕組み)とかけてるんだと合点がいきました。なんとなく神童と言うタイトル、