『ひまわりのかっちゃん』西川つかさ

ひまわりのかっちゃん

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書評/ルポルタージュ

「限界は、自分がつくるものです」
と、昔ある人に言われたことがある。
もちろん、体力的な限界というものはあるだろうが、人は、何か壁にぶち当たった時、「もう、ダメだ」と、まず心で負けてしまう。そこで尻込みしてしまうのか。それとも、挑戦し続けるのか。心ひとつで、壁を「限界」とするか、「勝利への飛躍台」とするかの違いとなる。
『ひまわりのかっちゃん』を読んで、私は、この言葉をふっと思い出した。

本書は、“ひまわり学級”という特殊学級にいた少年が、一人の教師と出会って学ぶ喜びを知り、成長していく姿を描いた自伝的小説である。
少し変わっているのは、「僕は~」という回想で構成するのではなく、“かっちゃん”を主人公にした小説に仕上げているところだ。自らの少年時代を客観視して、生き生きと紙面に甦らせる手法は、北海道の方言と相まって、心あたたまる物語となっている。

著者の西川つかさ氏は、テレビやラジオの台本、漫画の原作や小説を書いて生計を立てている人物。いわゆる“物書き”として活躍する彼が、小学校五年生で森田先生に出会うまでは、ひらがなを満足に書けず、簡単な計算すら分からなかったというから、驚く。

「あの先生と出会った小学校五年生になる春休みを堺にボクの意識や感覚、いつも見ていたはずの風景までもが一変したのだ」とまえがきで述べているように、本書は、「森田先生以前」と「森田先生以後」で大きく分けられる。
「森田先生以前」の“かっちゃん”は、担任教師にひまわり学級に入ることを勧められて泣き崩れる母親とは反対に、「やったぁ!」と心の中で喝采を叫び、自分が拾われてきた子ではないかと思い悩む、ユーモラスな男の子として描かれる。

そして、周りから「はんかくさくてみったくなし(とろくてみっともない)」と言われ続けていた“かっちゃん”は、森田先生と運命の出会いを果たす。
森田先生は、“かっちゃん”の本来持っている能力を引き出し、自信をつけさせ、「考える」ことや「諦めずに一生懸命やる」ことの大切さを、体当たりで教えていく。

本書は、“かっちゃん”の成長物語であるとともに、森田先生の教師としての奮闘記でもある。卒業式を目前に控えて、「実はな、おめとはじめて会ったどき、先生、まさが、にしかわがここまでになるとは思ってながったんだよ」と先生がぽつりと漏らした言葉が印象的だ。
“かっちゃん”と真剣に向き合うことで、森田先生も“かっちゃん”からたくさんのことを教えられていた。「教育」とは、「共育」ともいえるのだ、と思った。

そもそも、頭がいいか悪いかの違いなんて、思うほど大きな差はないのかもしれない。
自分の可能性を信じて頑張れるかどうか―。差があるとすれば、この単純だが難しい一点にこそ、あるのではないだろうか。[Amazon]

本書は、本が好き!経由で献本していただきました。

    • Gori
    • 2007年 3月18日 9:34pm

    私も心あたたまる物語を楽しみました。
    気が付いたら、かっちゃんと森田先生を必死に応援している自分がいました。確かに「教育」とは「共育」なのでしょうね。いい本でした。

  1. 「ひまわりのかっちゃん」読みました。

    ひまわりのかっちゃん著:西川つかさ単行本:254ページ出版社:講談社 (2007/2/9)定価:1365円livedoor BOOKS書誌データ / 書評を書く_uacct = "UA-918914-3";urchinTracker();実は、参画させていただいている”本が好き!PJ”のメンバーの皆様の書評を拝見して

    • ぐら
    • 2007年 3月21日 1:33am

    子どもたちと同じように、先生も悩みながら共に成長している。
    そんな当たり前のことを教えてくれた一冊でした。
    装丁も、素敵ですよね。帯をはずすと、かっちゃんの笑顔がはじけて。

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