『アルマ 運命のペン』ウィリアム・ベル

アルマ―運命のペン子どもの頃から、本が好きだった。
ページを開けば、その場にいながらにして時空を超えることのできる“読書”という行為は、私にとって、とてもアクティブで心躍るものだったのだ。
ただ読むだけではもの足りず、自分が読みたい物語を書いたりもした。書き終えた後は、自分が大作家になった気がして誇らしかったが、実際は自己満足の拙いものに過ぎなかったのだと思う。けれど、自分で物語を生み出す時の独特のスリルを味わえたのは、貴重な体験だったに違いない。

本書の主人公・アルマは、本が大好きな女の子だ。想像力豊かで物語を書くのが好きな彼女は、将来作家になることを夢見ている。
ある日、アルマが母親と暮らす小さな港町に、気むずかしい老女・リリーとその娘・オリヴィアが越してきた。最初はリリーのことを不気味に思っていたアルマだが、本を通して次第に心を通わせていくようになる。

起承転結のはっきりとした作品で、読みやすい。
母親と二人で暮らすアルマの日常から始まり、リリーとの出会いと交流、二人の友情に変化をもたらすある出来事を経て、ラストへ。
謎解きの要素が加わったストーリーの骨格がしっかりしていることと、それに伴って揺れ動くアルマの内面が丹念に描かれていることが、この作品をおもしろく魅力的なものにしている。

嫉妬、裏切り、後悔といった負の感情が現れるものの、終始物語に暗さは感じられない。それは、アルマと母親・クララの性格によるところが大きいと思う。
二人の生活は、貧しい。クララが下働きをするパブの下で暮らす住環境は決していいものとはいえないし、夕食にはそのパブのキッチンから持って帰ったフライが並ぶ。アルマの使うクレヨンは学校で捨てられたものだし、本が大好きでも古本でしか買えない。
それでも母子は明るく、たくましく、お互いを思いやりながら生きている。お金だけでは得ることのできない幸せが、ここにはあるのだ。

作中で主に光が当てられるのは、本という共通項でつながるアルマとリリーの年齢を超えた友情なのだが、その根底には、アルマとクララの親子愛がしっかりと息づいている。
一本のペンから紡ぎ出される物語の力や、それに関わる人々の心の触れ合いがさわやかな筆致で描き出されており、心あたたまる一冊である。[Amazon]

カナダ:岡本さゆり・翻訳

Alma
William Bell
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