『生かされて。』イマキュレー・イリバギザ

生かされて。数年前、何気なくテレビをつけたら、1994年に起こったルワンダ大虐殺のドキュメンタリー番組を放送していたことがある。
ルワンダで何があったか全く知らなかった私は、画面を通して流れるおぞましい映像に釘付けになった。斧を振りかざしてツチ族を襲うフツ族。死の恐怖に怯えながら逃げ回る人々。国同士の戦争なのではない。今まで仲の良かった隣人や友だちが、ある日突然殺意を持って向かってくるのだ。
観終わって数日の間、ショックで眠れなかった。それ以来、この事件にはあえて目や耳をふさいで考えないようにしてきたのだが、大虐殺を経験したツチ族の女性が書いた本書は、どうしても読んでみたくなり手に取った。
約100日間で100万を越す人々が殺された地獄の中、どうやって生き抜き、どのようにして正気を保ったのか。そして殺人者たちに対してどんな感情を抱き、現在幸せに暮らしているのか。その答えが、本書にはある。

ただ、ルワンダ大量虐殺の政治的・歴史的意味や、国連はじめ各国の対応、フツ族側の主張については詳しく書かれていないので、それらを知りたい人は他の本を読む方がよい。ここで描かれているのは、著者自身が体験して感じたルワンダである。
本書は、亡くなった多くの人々への「追悼の書」であり、二度と悲劇を繰り返さないための「誓いの書」であり、一人の人間の「魂の軌跡の書」なのだ。
著者は、信仰深い両親のもと、しっかり者の長男、ひょうきんで人気者の次男の2人の兄と、姉思いの弟に囲まれ、家族6人で幸せに暮らしていた。しかし、狂気の嵐が去った後残ったのは、著者と外国にいた長男だけ。

著者は、懇意にしていたフツ族の牧師にかくまわれ、7人の女性とクローゼットほどのスペースしかない小さなトイレで3ヶ月の間身を潜め、生き延びる。
いつ殺されるか分からない極限状態の中彼女を支えたのは、信仰である。「この戦争を生き抜く戦いとは、内なる自分との戦いなのだ(P.151)」と悟った彼女は、奮然と見えない敵と戦うことを決意する。見た目には、息をひそめて隠れているだけだが、彼女の内部では押し寄せてくる恐怖や憎悪と、勇気や希望の対決が繰り広げられていたのだ。
第二次大戦中、ナチスの強制収容所で生き延びたのは希望を捨てなかった人、と聞いたことがある。
何度も心が折れそうになりながら、ついに彼女は、殺人者たちのために祈りを捧げるまでに。家族を殺し自分の命を脅かした者たちを「許す」ことで、彼女は最悪の状況を自分の魂を鍛え上げる場に一変させたのだ。

人々が殺される様子や、累々と積み上げられる死体の山の描写が生々しいにもかかわらず、本書が重苦しく感じないのは、著者の目が過去の悲劇ではなく、未来に向けられているからだと思う。
本当に強い人間とは、武装して肉体的に力がある者ではなく、強靭な心を持っているかどうかなのだ、ということを教えてくれる感動の一冊である。

ただ、序文はいかがなものか・・・。オーバーな表現や直訳英語はいいとして、「スピリチュアルの世界へようこそ」的な胡散臭さが鼻につく。
むしろ、序文を飛ばして本文にいった方が、余計な先入観を持たずに読めると思う。[Amazon]

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    • 星歐花
    • 2007年 5月31日 7:44pm

    こんばんは。
    この本を読まれましたか!
    私も、この本の読書日記を書いたことがあります。ルワンダには謎が多いですね。作者の崇高さには打たれましたが、でも、一部謎は残ります。
    漂白のルワンダは未読でした。
    とても素晴らしいレビューで感動いたしました。
    それと、サイトマップを作られているんですね!
    とってもわかりやすいです。
    私も、このカスタマイズに挑戦したいと思っていたところです。いろいろとお勉強をさせてもらいます!

    • ぐら
    • 2007年 6月1日 9:24pm

    コメントありがとうございます。
    “ほしおうか”さんとお読みすればよいのでしょうか。
    この本は、人間の残酷さと偉大さの両方を感じた一冊でした。
    サイトマップは、ブログの内容を俯瞰できるので便利ですよね。
    これを作りたくてこのテンプレにしたようなものですから・・・(でも自分では見ることがないので、こう言っていただけて嬉しいです)。

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