『ウラナリ、北へ』板橋雅弘
「ウラナリ」シリーズ第2段の本書は、前作から3ヵ月経った、ある秋の日から始まる。
高校受験を直前に控えたハヤブサとサクラは、受験勉強に忙しい。ハヤブサは、内部進学試験に合格しなければ、アサカゼたちと一緒にハンドボールすることができなくなるから必死だ。一方、サクラは、両親が東京への進学に難色を示していて、合格しても手放しで喜ぶことができない。
果たして、ハヤブサとサクラに春はやって来るのか?さまざまな思いを抱えながら、少しずつ大人になっていく二人の中学生を描いた作品。
今回も、サクラの高飛車ぶりは健在である。ハヤブサを尻に引き、さんざん振り回す。ちなみに、私のイメージするサクラは、沢尻エリカである。
けれど、そんなワガママな態度が実は、ハヤブサだけに向けられていたことが本書で明かされる。「たぶん、ハヤブサに見せてるのが、本当の自分だから」とぽつりと漏らすサクラのひと言に、しんみりさせられた。自分をさらけ出せる相手がいるというのは、本当に幸せなことなのだろう。
サクラがどんなに横暴でも憎めないのは、寂しさを押し殺して強気に振舞っているところがいじらしく感じるからだ。
本書では、子どもたちからズームアウトして彼らを取り巻く大人たちにもアングルを向けているところが、特徴的だ。親たちも悩み苦しみながら、最善と思う決断を下している。そんな大人たちの心の内が分かる物語になっている。
なんといっても個性的なのが、ハヤブサの父親だ。
女性との交際発覚によってハヤブサが家出することになっても、慌てふためくことなく、「ようやくうちの息子も、家出するまでに成長しました」と喜ぶ度量の大きさ。けれど、息子が帰ってくる時には、あたたかく迎え入れることも忘れない。そこに、息子への愛情の深さを感じるのだ。[Amazon]



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