『きみはポラリス』三浦しをん
- 新潮社
- 1680円
Amazonで購入
書評/国内純文学
三浦しをんの最新刊である。ただ、11篇中4篇は、既刊のアンソロジー本に収録された作品なので、それらを買った人(しかも三浦しをん目当てで)は、「そんなことなら先に言ってくれよ・・・」とぼやきたくなるかもしれない。
私自身、「春太の毎日」(『最後の恋』収録)に関しては、エビスビールのホームページで公開されていた時(「最後の恋」というテーマで女性作家が競演する豪華な企画だったのだ)から読んでいるから、今回で3度目となる。
さて、帯によると本書は、
世間の注目も原稿の注文も「恋愛」のことばかり。なら、とことん書いて見ようじゃないの!ということで生まれた「恋愛短篇集」。
という一冊らしい。やはり、女性作家には恋愛小説の原稿依頼が多いのだろうか。本書には、「世間の“純愛”がなんぼのもんじゃい!本当の恋愛を見せてやる!」という三浦しをんの意気込みが伝わってくるような、ちょっと「変」な愛のカタチが描かれている。いや、彼女にとってはこれが「普通」の恋愛なのかもしれないが。
本書は、最初の「永遠に完成しない二通の手紙」と最後の「永遠につづく手紙の最初の一文」が対になって、他の9篇を挟み込むように構成されている。
そして11の物語は、「お題」もしくは自分で設定した「自分お題」なるテーマをもとに書かれている。「初恋」、「禁忌」、「三角関係」、「信仰」が、彼女の手にかかるとどんな恋愛小説に仕上がるのか。そこに注目して読むとおもしろい。
中でも、「王道」をテーマにした「私たちがしたこと」は、「これが王道の恋愛?」と面食らったが、決して終わらない恋愛があるとすれば、こんな関係なのかもしれない。
人の心は移ろいやすいものだ。「この人が運命の相手だ」と信じていても、明日になれば分からない。しかしここに登場する二人は、見えない鎖で繋がれているかのように一生お互いを忘れることはできない。それが、たまらなく哀しいのだ。
私はエッセイ同様、三浦しをんの小説もほとんど読んだが、いまだ「傑作」と呼べる作品に出会っていない。鋭い観察力、高い筆力、豊かな想像力、斜に構えた視点などからすれば、彼女の実力はこんなものじゃないだろう、と感じていた。
だから、この作品を読んだ時、「こういうのを書いてほしかったんだ」と嬉しくなってしまった。他の作品は楽しいが、少し軽い。残念ながら、何度も読みたいとは思わない。
しかし、「私たちがしたこと」は、本書の中で異彩を放っている。題材が、というより、抑制の効いた文体で徐々に内面を掘り下げていく描き方が巧い。作品の雰囲気では「冬の一等星」が好みだが、完成度としては「わたしたち~」の方が高い。これだけでもこの作品集を読む価値はある、と思う。
このままエンタメ路線で突っ走るのか、それとも、もう一段深いところを描ける作家になるのか。どちらが優れている、というものではないが、個人的には後者になってほしいと期待している。[Amazon]
※本書は、本が好き!経由で献本していただきました。




先日は、コメントありがとうございました!
「鋭い観察力、高い筆力、豊かな想像力、斜に構えた視点などからすれば、彼女の実力はこんなものじゃないだろう」
私自身は三浦作品を網羅しているわけではないですが、そういう感じなんだかわかります。自分何様という感じですが、ちょっと歯がゆい感じ。でも一方で、三浦さん自身が、深みに触れそうになった途端にさらりと身を翻していらっしゃるようにも感じられ、三浦さんが目指していらっしゃるのは、そういうものではないのかな?とも思われます。
「私たちがしたこと」の”王道”、私は、”彼女の危機を彼氏が救う”という、ドラゴン退治的、白馬に乗った王子様的シチュエーションのことかと思いました。それを三浦流に書くとそうなるのかー!!と、心底身震いしてしまいました。
「そんなに偉そうに言うなら、短篇のひとつでも書いてみろ!」と反論されたらぐうの音も出ません。
でも、三浦しをんさんならまだまだやれる、と期待しているんですよね。
芸(ゲイではなく)の道に生きた男の伝記小説みたいなものを書いてほしいなぁ、と勝手に思ったり。
>白馬に乗った王子様的シチュエーション
やはりそういうことなんでしょうか。
でも、ここまでされるとハッピーエンドを通り越して悲劇に見えました。
私だと重すぎて耐えられないです。
捨て身で愛されると、同等以上で応えなければならないプレッシャーを感じてしまいます。
「そんな生半可な気持ちなら恋愛するな!」と言われそうですが。
三浦しをん『きみはポラリス』
三浦しをん『きみはポラリス』新潮社 2007年5月20日発行“恋愛”をテーマにした短編集。きみはポラリス三浦 しをん図書館で読む本すべてを借りまくっている私だが、新品の本を一番に借りられるととってもうれしい。まだ誰もめくっていないページに挟まれた本の紐(しおり)
これまた今読み途中の本を発見。
私も全体的に小粒な印象があります。
でも「私たちがしたこと」はこの一冊読み終わっても
このお話は覚えてるだろうなあ、と思うようなかんじで
軽々しいようですがこんな捨て身で愛してくれる人と
高校生のうちに出会うなんて、何だか羨ましいような気が
してしまいました。
こんなに、ここまで運命的に結びついた関係でも
自分のために殺人まで犯した恋人とも物理的な別れは
訪れて、新しい恋人ができて・・という事に何だか寂しく
なる私は幼いのかなあ・・
三浦しをんさんの本で初めて読んだのが「秘密の花園」です。オススメですよ~
ともよさん、私はあなたが怖くなってきましたよ。
『秘密の花園』、少し前に買っていたのを、そろそろ読もうかな、と思っていたところです。
三浦しをんって私には直木賞作家というより、YA作家というイメージが強いんですよね。
それにしても、読む本の傾向が似ていますね。
おもしろい本があれば是非、教えて下さい。
きみはポラリス―三浦しをん
きみはポラリス(2007/05)三浦 しをん商品詳細を見る
しをんさんの恋愛をテーマにした短編集です。
やはり、若くて女性だからなんでしょうか。しをんさんにはこうした依頼が多いようで…