『ぼくが死んだ朝』ロバート・コーミア

コーミアの名を一躍世に知らしめた問題作、『チョコレート・ウォー』はおもしろかったが、どちらかというと本書の方が私の好みだ。
手に汗握る緊迫感。
息詰まる葛藤。
予測のつかない展開。
まるでジェットコースターに乗った時のような、スリルと興奮を味わうことができる。

物語は、テロリスト集団がスクールバスをジャックし、子どもたちを人質にアメリカ陸軍に要求をつきつける、というもの。
題材としてはありふれていて、単純なものだ。場面も、スクールバスの車中と高校の寮の一室の二ヶ所だけで進行するので、ともすれば平板な内容になりそうに思える。
それが、これほど息つく暇のないほど面白い物語に仕上がったのは、構成力・心理描写の巧さの勝利だろう。

臨時運転手の少女・ケイト、テロリストの若者・ミロ、テロと対決する陸軍准将、彼の高校生の息子・ベンジャミン。事件は、この4人の視点から語られていく。
コーミアは、4人の人物の書き分けが、実に巧い。そして、各章のラストが、次章の書き出しに重なり合い、場面交替がスムーズに行われているのもいい。
殺す者と殺される者との心理戦。親子の葛藤。この二つが交錯し、先の読めない展開となっている。
アクション映画のような銃撃戦は、本書ではそれほど重要ではない。そこへ至るまでの、登場人物の葛藤や、駆け引きといった、いわば心の中での戦いが、この作品の読ませどころだ。
実際、戦う最中より、これからどうなるか分からない状況の方が、余計なことを考える分、恐怖や不安は増すのではないだろうか。

全てが終わった時、「AFTER THE FIRST DEATH」というタイトルに、納得できるはずだ。
本書が絶版になっているのが、残念でならない。[Amazon]

アメリカ:金原瑞人・翻訳

After The First Death
Robert Cormier
After the First Death (Puffin Teenage Fiction)

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