『フューチャリスト宣言』梅田望夫・茂木健一郎

フューチャリスト宣言 (ちくま新書)IT分野の啓蒙者・梅田望夫氏と、脳科学者・茂木健一郎氏が、ウェブで変わりゆく未来について縦横無尽に語り合った一冊。
オピニオンリーダー的存在である二人の対談本ということで、いやが上に期待は高まる。両者とも、ブログで日々自分の意見を発信しているインターネット・ヘビーユーザー。ここで語られていることは、ネットの専門的な話題に留まらず、科学、教育、社会問題など、多岐にわたる。

「フューチャリスト宣言」というタイトルの通り、現代ウェブの世界について語りつつも、二人の眼差しは未来へ向けられている。最初、ネットの新しいビジネスモデルについて書かれているのかと思ったが、本書はもっと広い視野で未来の世界全体を捉えている。
IT辞典・ウィキペディアが日本から生まれなかった必然的理由。ぶどうとリンゴの実のぶら下がり方の違いで比較したアメリカと日本のネット社会。SNSはWeb2.0ではなく1.0のビジネスモデル。ネットを使った新たな学びの形。インターネットのオープン性は、生命原理に沿うもの…等々。ここで取り上げられる事例はひとつひとつが刺激的で、両者による指摘も鋭く、知的好奇心を満たすものである。

だが、本書は、何か新しい知識を得るためというより、底抜けに前向きな二人の生き方を感じ取る一冊なのだと思う。専門分野が異なる両者に共通するのは、楽観的な姿勢だ。楽観的とは、「どうにかなるだろう」という安易な希望とは違う。どんな困難があってもくじけない強い精神力を必要とする。
たまに、「ここがよかった」「ここが悪い」と、重箱の隅をつつくように書評を書くことが空しく感じることがある。特に本書のような明るい一冊を前にしては。未来をよりよいものにしていこう、という本気の対話にケチをつけるのは、人生を捨てた人間だけではないか。

そんなことを思いながら読み進めていると、「この本は、細部について批判するのがバカバカしいような明るい本となる」と予感し、そういう本にしたいと思った。(P.212)」という記述が。まんまと著者の思惑にはまったのか。でも、気分は悪くない。
この茂木氏による「はじめに」と、梅田氏による「あとがき」は、二人の熱い思いが伝わってくる読み応えがある名文なので、必読である。[Amazon]

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