『ぼくのプリンときみのチョコ』後藤みわこ
少女マンガ風のかわいい表紙につられて手に取ると、児童書らしからぬ内容にぎょっとするかもしれない。ボーイズラブ的要素が入った作品なので、受け入れられない人は、とことんダメだろうな、と思う。その意味で、好みが分かれる一冊といえる。甘いタイトル自体、性に関する隠語なのだ。
物語の主な登場人物は、カバーイラストになっている中学二年生の男女三人。
晴彦は、幼なじみで親友の真樹(まさき)と、クラスメイトの志麻子を誘ってテーマパークへ出かける。そこで行われた、「願いごとがなんでも叶う」というイベントによって、真樹の胸は膨らみ、志麻子の胸はぺちゃんこになってしまう。
「男女の入れ替わりモノ」と聞いて思い浮かぶのが『転校生』(原作:『おれがあいつであいつがおれで』)だが、本書で起こる変化は胸のあるなしで、人格までは入れ替わらない。それにここでは、入れ替わった当人たちより、親友の変化を前にした第三者・晴彦に主に焦点が当てられているのが特徴的だ。
親友に突然訪れた体の変化に驚きつつも、膨らんだ胸を触りたい衝動を抑え切れない晴彦。この思いは友情なのか、恋愛感情なのか、単なる性欲なのか。湧き上がる感情に戸惑う姿が、ユーモラスに描かれている。
もっとも、真樹に対する晴彦の思いは、「同性愛」とまではいえないだろう。晴彦は、真樹の胸を通して志麻子を見ているのだ。本書では、うっかり志麻子の胸を触ってしまった最初の場面が、その伏線となっている。
この頃の女子と男子では、精神年齢に差がある。物語の中でも、志麻子ははっきり自分の気持ちを自覚しているのに、晴彦は自分の中のもやもやした感情が何なのか、まだ分かっていない。それが、“おっぱい”の出現をきっかけに、あたふたしながら自分の内面を探り始めることになる。
本書の巧さは、思春期の登場人物が自分の気持ちに向き合う過程を、丹念に描いているところにある。「胸の入れ替わり」というあり得ない設定なのに、そこで芽生える感情や性欲は、ありがちで、共感できるものなのだ。
他人の気持ちが分からないがゆえの悩みは尽きないが、本当に不可解なのは自分の心なのかもしれない。自分の中にある「好き」という感情を、自分自身で見つけていく様子は、じれったくも、ほほえましい。
ただ、男の子たちの内面が丁寧に描かれているのに比べると、志麻子の描写が弱いのが残念だ。
また、“深海の魔女”なる人物の登場は唐突で、無理矢理人魚姫の物語と絡めた印象を受ける。この作者、女性を描くのはあまりうまくないようだ。[Amazon]



ボーイズラブボーイズラブとは男性同士の同性愛を題材とした女性向けの小説や漫画のジャンルのことである。10代の少年、特に美少年同士の間での恋愛を指す言葉であり、大人同士の作品はメンズラブと呼ばれる場合があったが、最近では広い範囲で「女性向の男性間同性愛」を指