『クチコミのチカラ』ベクトルグループ編著

クチコミのチカラ

  • ベクトルグループ
  • 日経BP社
  • 1,470円

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書評

インターネットの登場で、最も影響を受けたのは、人々の消費スタイルではないだろうか。
これまでは、テレビCMや雑誌・新聞、電車の中刷り広告など、いわゆる「マスメディア」から流れてくる情報が、私たちの判断材料の大部分を占めていた。旬のタレントがにっこり微笑みながら手にしている商品は、「なんとなく良い」ものとして自然と記憶に刷り込まれ、購買意欲を刺激していた。

しかし、それらの影響力は、以前に比べると格段に低下しつつある。代わって重きを占めるようになったのが、インターネットを飛び交う無数の情報。
私自身、何か買う(その商品が高額であるほど)前にはまず、アマゾンや価格.com、ブログなどのレビューに目を通し、情報を集めるのが当たり前になった。ネット上のクチコミサイトが活況を呈していることをみても、この行動は一般的なものなのだろう。

いまや、昔からある「クチコミ」が、ネットという道具を得て、私たちの消費行動を大きく左右するほどの力を持つようになった。本書は、クチコミの力に注目し、それをいかにビジネスに活かしていくかということを、マーケティングの観点から捉えた一冊である。クチコミが、“Word of Mouth(WOM)”と称されているのを、本書で初めて知った。
コンパクトにまとめられているので、専門家でなくても読みやすいが、中身は濃い。この分野で先行しているアメリカの成功例等、さまざまな事例を通して、クチコミによる新しいマーケティング現象を俯瞰している。
日頃実感として抱いていた消費行動の変化に言葉が与えられたようで、読んでいてとても気持ちがよかった。今のところ、WOMマーケティングの現状を知るには最適の一冊ではないだろうか。
それだけでなく、私が本書を優れていると思うのは、企業がクチコミマーケティングにどのように取り組めばいいか、その具体策を提案しているところにある。あくまで実践としてマーケティングを論じているので、実際に仕事で携わっている方には有益といえるだろう。

新しい手法のマーケティング論ではあるが、WOMの本質が「聴衆とのきずな」であることや、企業は消費者との対話する努力を怠らないこと等、本書で書かれていることは、ごく当たり前のことだ。マーケティング論というよりむしろ、コミュニケーション論といってもいいかもしれない。
特に、消費者を「市民」と捉え直し、ブランドの広報部員として扱ってはいけないとの視点は、新鮮で、興味深かった。
これからの企業は、クチコミをビジネスに活かすためにあらゆる仕掛けを施さなければならない。それも、それが消費者の目にあざとく映らない程度に。この匙加減が難しいし、自分の手を離れてしまう怖さがあるだろう。だが、誠実に相手の話をよく聴くという姿勢は、商売の基本。手法は変化しても、本質的には同じなのだ、と思う。

ところで、本書はライブドアの「本が好き!」サービスから献本していただいた。これは、書評を執筆することを条件に、無料で本を受け取れる、という書評コミュニティー、いわゆる本のクチコミサイトである。
報酬はないから「ペイドWOM」ではないが、タダで本が読め、義務が生じるのだから、純粋な「オーガニック(自然発生的)WOM」でもないことになる。本書では、日本はこの「ペイドWOM」と「オーガニックWOM」の区別が曖昧だが、「ペイドWOM」に関しては広告とみなして法律の規制対象とすべき、と書かれている。
自由に好き勝手書かせてもらっているから…と深く考えていなかったが、「オーガニックWOM」でない以上、そのことを最初に明らかにしておく必要がある。本書を読んで、(影響力はないが)いちブロガーとしての意識の低さを気づかされた。

ネットの普及によって、個人が総表現者・総伝道者となる時代を迎えた。今後は、著作権とともに、このWOMマーケティングを巡る問題がクローズアップされるようになっていくのではないか。
本書は、改めて自分の参加しているコミュニティーとの関係を考える一助となった一冊である。[Amazon]

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