『ウラナリは泣かない』板橋雅弘

ウラナリは泣かない (YA! ENTERTAINMENT)「ウラナリ」シリーズ第4段の本書は、ラストシーンが冒頭にくるという、少し変わった構成になっている。しかも、かなり意味深な内容である。最終巻への「引き」は充分、といったところか。
本書は、高校生活にようやく慣れてきたハヤブサとサクラのひと夏を描いている。この巻は、ハヤブサをとことんいじめ抜くために書かれた、といってもいい一冊である。

再婚した母親からの衝撃的な報告から始まり、ハンドボール部の仲間との軋轢、恋のライバルの出現など、さまざまな問題がハヤブサの頭を悩ませる。これまでの、波風立たないように地味に暮らしていたハヤブサだったら、これほどたくさん問題は出て来なかったのかもしれない。壁にぶち当たるのは、着実に前へ進んでいる証拠なのだろう。一巻に比べると、ハヤブサが少しずつ成長して、頼もしくなってきた。
逆に、存在感が薄れてくるのが、サクラ。慣れない一人暮らしで体を壊す姿には、一巻のような強さが感じられない。作者はサクラの弱い部分も描きたかったのだろうが、このシリーズは、サクラの強さがないと物足りない。「普通」の女の子なら、他の作品と変わらないのだ。

私がうまいなぁ、と感心したのが、本書のテーマである「成長痛」に、成長に伴う体の痛みと、心の痛みという二つの意味が込められているところだ。
成長過程には、きしむ体の痛みと、人間関係で悩む心の痛みを避けては通れない。本書では、この二つをうまく織り交ぜながら、青春まっさかりの若者たちの姿を描いているところに好感が持てる。
中高生の読者であれば、登場人物たちに共感できる部分が多いのではないだろうか。

ただ、この巻が必要だったのかは疑問である。
スローペースのシリーズとはいえ、敢えて一冊かけて描くほどの物語とは思えなかった。ハヤブサとサクラの恋模様は前作で描けていたし、ハンドボールに関してもそれほど進展がない。ハヤブサの父親と母親を巡って新たな展開はあるものの、これなら前作か最終巻でまとめて書くことができたのではないか。
それなりに楽しめるが、最終巻に向けて無理矢理引き伸ばして書いた物語、という印象を受けた。[Amazon]

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