『ぐるぐる猿と歌う鳥』加納朋子
表紙の猿と鳥のイラストを見てナスカの地上絵みたいだな、と思っていたら、まさにそれだった。もっとも、ミステリーサークルの謎自体は、物語の本筋とはあまり関係ない。けれど、作品の中にうまく取り入れられている。
舞台は、北九州のとある社宅。
ここへ、小学5年生の主人公・高見森(シン)が、父親の転勤で東京から引っ越してきた。わんぱくで気の強いシンが出会った、個性豊かな社宅の子どもたち。彼らと過ごすうちに、シンは社宅に隠されたある秘密に気づき始める…。
加納朋子さんの作品を読むのは本書が初めてなのだが、人気のあるのが分かる気がした。この、物語に漂うほんわかとした雰囲気は、独特なものがある。本書は、結構ヘビーで、考えさせられる問題を孕んでいるのだが、それを重苦しくさせず、さわやかな物語に仕上げているのは、作者の性格に依るところが大きいのだろう。
本書は、「講談社ミステリーランド」シリーズのために書き下ろされた作品だ。
このシリーズを読んでいて思うのは、「ミステリー」と一口に言っても幅が広い、ということ。殺人事件の犯人探しといったドラマチックなものでなくとも、日常のちょっとしたところにも謎は転がっている。主人公の頭がいいのが、少し出来過ぎているものの、冒険でもするように次々と謎を解いていく展開は、ワクワクした。九州弁で騒がしい社宅の子どもたちとの掛け合いも、可愛らしい。子どもたちは自分たちの社会をしっかり作り上げている。そんな様子が生き生きと描かれており、楽しい一冊である。
ところで、ミステリーといえば、本書では“パック”と呼ばれる少年の存在が最大の謎である。
本名も素性も分からないこの少年の名前に、シェイクスピア戯曲でお馴染みの妖精・パックの名を当てているところに、作者の遊び心を感じる。神出鬼没の姿は、人ならぬ妖精という方が近いのかもしれない。
社宅に隠された秘密。それが明かされた時、なんともいえない寂しさと、大切な人を守ろうとする人間の思いを感じた。[Amazon]



ぐるぐる猿と歌う鳥-加納 朋子
ぐるぐる猿と歌う鳥 (ミステリーランド)(2007/07/26)加納 朋子商品詳細を見る
小学五年生の高見 森(シン)は父親の転勤で、東京から九州に転校してきた。
住む所は会社の工場の社宅。…
ぐらさん、こんにちは!
こちらが初加納さんだったんですね。他の本「ななつのこ」とか「ささらさや」とか「てるてるあした」とかも是非読んで欲しいです。
こちらの本同様、結構へビーなのにやさしい仕上がりになってますよ。
こんばんは。
そうなんです、加納さんの名前はあちこちで目にしていましたが、読んだのは初なんです。
おもしろいですね。
「ななつのこ」から読んでいこうかな、と思っています。
そういえば、これって北村薫さんに関係あるんですよね?
こんにちは。
加納さんも当たりはずれはありますが、じんわりしたお話しが多くて、楽しめると思います。
>そういえば、これって北村薫さんに関係あるんですよね?
この頃は、北村先生の「日常ミステリ」がジャンルとして確立して、加納さんとか若竹七海さんとかたくさん出てきてました。
Wikiで調べたら「敬愛する北村薫に送る為に書かれたもの」とあったので、かなり関係深いと思いますよ。
「日常ミステリ」ですか~。
ミステリーってほとんど読まないから、そんなジャンルがあるなんて知りませんでした。
教えてくださってありがとうございます。
加納さんの作品から漂う雰囲気は、北村さんのものと似ていますね。じんわりあたたかくて。