『サウスバウンド(上・下)』奥田英朗

とんでも精神科医”が活躍(?)する伊良部シリーズもそうだが、奥田英朗の描く人間は、世間の常識にとらわれない。自分独自の世界観を持って生きている。
本書に登場する上原一郎は、方向こそ伊良部とは違うけれど、他人の意見に左右されない、という点では本質的に同じだ。自分の信じる道を突き進み、関わった周囲の人間は彼が引き起こす面倒に巻き込まれてしまう。
本書の内容をひと言で書くと、破天荒な男に振り回される家族の姿を、小学6年生の息子の目を通して描いた物語、となるのだろうか。
上原家は、父の一郎、母のさくら、姉の洋子、語り手の二郎、妹の桃子の4人家族。元左翼の有名な活動家の父親は、数々の武勇伝を持つ。フリーライターとしての収入は微々たるもので、実質的に家計を支えているのは喫茶店を経営する母親。
世間に合わせることのできない彼は、国民年金の支払いを巡って役所の人間と問答したり、息子の担任に議論をふっかけるため学校へ乗り込んだり、と次々と揉め事を起こしていく。
実際、こんな父親を持った子どもは大変だろう。父親が厄介事を起こすたびに二郎が「だあーっ」と心の中で叫ぶ場面は、可哀想なのだが笑ってしまう。
本書は二部構成で、一部と二部では話がガラリと変わる。一部では、二郎の学校生活で起こるさまざまな問題を中心に展開するが、二部では舞台を東京から沖縄・西表島へと移し、自給自足の生活の沖縄ライフが描かれる。
ただ、どこへ行っても父親は変わらない。他人に屈することができないために、周囲に波風を立ててしまう。
彼の生き方は極端すぎて、すべてに共感できない。しかし、「上原一郎語録」なるものが作れそうなほど、彼の発するひと言ひと言が真理を突いており、はっとさせられるのも事実である。ちなみに、本書は映画化される(2007年10月6日 ロードショー)のだが、その公式ホームページの中に、「親父語録」が載っていた。
またこの作品は、破天荒な男の生き方を描いている一方で、少年がたくましく成長していく様子や、家族が結束していく様子を描いている。最初は父親を煙たがっていた少年が、父親の長所と短所をまるごと受け入れ、世の中の矛盾や本当に大切なものに目を向けるようになっていく。
沖縄のゆったりとした時間と美しい自然を背景に、すがすがしい読後感を残す一冊である。[Amazon]



奥田英朗【サウスバウンド】
12月28日に読み始めて、1月9日に読了。
ぱんどらさん、読み終わるのに10日以上かかってんじゃないかよー。
あ……いえ、28日に少し読んで、しばらく放置したまま他の本を読んで…
映画「サウスバウンド」を見た
映画「サウスバウンド」を見た。
豊川悦司と天海祐希が主役
むしろ主役は家族で移住する西表島
海が綺麗だった。