書評って?

書評って何だろう?
書評ブログと銘打っていながら、私は未だにどんなものを書評と呼ぶのか、分からない。読書感想文、読書記録、解説などと、何がどう違うのだろう?
というのも、私の書評(と思っているもの)が、ひどく中途半端な気がしてならないのだ。
そもそも、「未読の人が読みたくなるようなレビュー」という趣旨でこのブログを始めたのだが、どうも当初の思惑からずれてきているように感じる。いや、「未読の人のため」なんて後づけの理由で、本当は、文章を書くことへの苦手意識を克服したかっただけなのだけど。

なぜ私の書評が、中途半端に感じるのか。
まず、他の読書サイトに比べると、レビューが長い。
こんな長文を、一体どれだけの人が読もうと思うのだろうか。多分、一読してそのまま立ち去る人が大半だろう。よほど中身が優れていれば別だろうが。
つまり、未読の人には全く優しくないレビューなのだ。けれど、あらすじを書いた上に自分の意見を書こうとすると、どうしてもこの分量になってしまう。

河岸忘日抄武器よさらば 上 (1) (光文社古典新訳文庫 Aヘ 1-1)
ただ、あらすじを書くことは書評を書く上で必要なのだろうか?
感想だけではどんな本か分からず不親切だと思っていたが、あらすじを書くことで、むしろその本の魅力を殺ぐことになっていないだろうか?特に小説は、あらすじにできない、そこから漏れてしまった部分にこそ、おもしろみがあると思う。
例えば、堀江敏幸さんの『河岸忘日抄』という作品がある。これは、異国の河岸に停泊中の船で暮らす男の日常を淡々と綴った物語であり、とりたてて大きな出来事が起こる訳ではない。この小説のあらすじを書くと、とてもつまらないものになってしまう。
最近、「あらすじで読む文学」などといった本が人気だが、あらすじだけ読んで何が楽しいのか、さっぱり分からない。ヘミングウェイの『武器よさらば』なんて、あらすじだけ見ればただのメロドラマである。

また、未読の人が読むことを考えて、レビューはできるだけネタバレしないように心がけている。しかしそれは、あまり中身に踏み込めない、ということでもある。
人によって読書の楽しみ方は千差万別だろうが、私は、自分の頭で考えるところにあると思う。
もしかしたら、私は物語の筋や展開なんて実はどうでもよくて、その向こうにいる書き手の思想や人生観といったものを知りたくて本を読んでいるのかもしれない。本を単なるツールとしている私の読書法が正しいかは分からない。レビューでは、「人物が描けていない」とか「物語のテンポがいい」などと分かった風なことを書いているが、文学的評価なんて、ちっともできていないのだろう。本を読むと、作品の内容より、書き手がどんな人物でどのように世界を捉えているか、ということの方が気になってしまう。

デザインの輪郭にぎやかな天地 上
工業デザイナーの深沢直人さんが『デザインの輪郭』の中で、「輪郭を成す要因は、誰しもが共有している。だから、誰もが 輪郭を既に知っている。ただ、それを自覚していないだけなのである。」と語っていたが、同じことを文学に当てはめれば、作家というのは、それを言葉で書いてみせることのできる人なのではないだろうか?
読書好きの叔母に薦められて初めて読んだ宮本輝さんの作品が、『にぎやかな天地』だった。主人公の設定に無理があって物語にはあまり入り込めなかったが、作品から読み取れる作者の死生観にはいたく感銘を受けたことを覚えている。ノーベル賞作家のガルシア=マルケスより、一段深い視点で「命」というものを見つめていると思う。
恩田陸さんや宮部みゆきさんの作品はおもしろくて好きだけど、何度も読み返すのはやっぱり、トルストイやタゴールの作品である。作者の思想に共鳴できるかどうかが、私にとっては大事なことなのだと思う。

そんな風にあれこれ考えたことを一旦書くのだが、純粋な本の評価とはいえないと思い、その部分を削って掲載している。だから、ここにあるのは「書評」ではなく、単なる「本の紹介」なのかもしれない。
いつもと違って、書きながら考えているので、まとまりのない文章になってしまった。
書評が、本のポイント(読みどころ)を書くものだとすれば、私の書きたいものは書評ではないのかもしれない。作者論?思想論?そんな大げさなものではないけれど。自分の書きたいものと、書いているものが微妙に違っているから、中途半端に感じるのだと思う。

書評って、本当に何なのだろう?

  1. こんばんは。
    ブログを初めて1ヶ月ちょっとの私にはとても興味深く読ませていただきました。
    どのように書くべきか試行錯誤の毎日で、数こなすしかないと勢いで書いている状態です。
    1年続けられているぐらさんも悩まれているのを知って、少し気が楽になった気がします。

    • ぐら
    • 2007年 10月13日 9:31pm

    どこかのサイトに、「書評は最低100本書け」とありましたが、100本書いて自分のスタイルが決まるどころか、いっそう悩みが深くなっている今日この頃です。
    花梨さんの文章は読みやすくて、参考になります。
    あの「走」のくだり、同じように感じていたのをうまく表現されていて、笑ってしまいました。

  2. 私は、「書評」を書いているつもりはあんまり、ないんですよね。だから自分の書いたものが「書評」なのか「本の紹介」にすぎないのか気にしたこともありませんでした。
    いつかも書いたように、簡単な紹介と感想を、うちの子供たちが読んで興味を持ってくれるかな、くらいのつもりで書いています。そんなこんなでなんとなくあのスタイルに落ちついたわけです。まあネタバレはある程度は仕方ないですが…
    だからアノ人にけなされても自分のスタイルを曲げるつもりはありません。
    ぐらさんのレヴューはかなり大雑把な私のレヴューよりも細部に目が行き届いていていつも感心しています。ぐらさんは読みながら色々考えているでしょ?私は読んでしまうまで何も考えていないんですよ。だからあんなに大雑把なんです。
    文章が長くなってしまうのは、実は私も悩んでいます。せめて3分の2の長さにしたいですよね。

    • piaa
    • 2007年 10月13日 10:53pm

    ↑ありゃ、タイトルの所に名前書いちゃった。すいません。

  3. ありがとうございます。
    いつも、読みやすくを心がけて書いてたので、
    嬉しくて小躍りしてしまいました。
    「走」で混乱したの私だけではないんですね。
    よかった!

  4. 書評とは何か!難しいですね。
    私は、自分のブログははじめは単なる自分の読書記録と思っていたが、色々な本にトライすべく「本が好き!プロジェクト」に入ったら書評を書かなければならなくなって….書評については悩んでいます。
    ぐらさんの文章は決して長くはなく、程よいと思います。また本の内容もうまくまとめて書いてあるし、本の内容に沿った評論になっていると思います。私も参考にさせて頂きます。

    • ぐら
    • 2007年 10月14日 9:25pm

    前も思ったんですけど、お子さんのために読書の楽しさを伝えているお父さんって、素敵です!
    そういう姿勢は大事ですよね。
    だからこそ書く意味がある、というか。
    言葉をひねくり回した自己満足の文章じゃないから、まっすぐ心に届くんでしょうね。
    自分のレビューって、重箱の隅をつつくようなものじゃないかという気が、最近しています。

    • ぐら
    • 2007年 10月14日 10:05pm

    west32さん、お久しぶりです。
    そうなんですよ!「本が好き!」に参加してから、いっそう書評って何だろう?と考えるようになったんですよね。
    みんなの共通認識として使われている「書評」って何だろうって。
    それと、嬉しいお言葉、ありがとうございます。
    書評って、評者自身も評価されるものだから、結構怖いです。

  5. すこし興味があるので、コメントさせていただきます。
    「書評というのは何か?」というのは、とても難しい問題ですね。
    あらすじについてですが、僕は書かなくていいのでは、と思ってしまいます。というのは、まとめるのがうまいへたはあるにしろ、極論を言えば、あらすじは誰でも書けると思うからです。と言っても、書いたほうが見ている人にとって親切であるのは言うまでもなく、あらすじを書いている人はえらいなあ、優しいなあ、と思います。
    でも、ぐらさんがある本を読んで感じたこと・考えたことが書けるのはぐらさんだけです。
    僕が(あくまで僕がですが)他人の書評を読む理由は、他人が本を読んで何を感じるか、考えるか、が興味深いからです。それが自分と違っていれば、よりおもしろい。
    「おもしろかった」とか、「感情移入できなかった」とか、そういうことは、(また極論を言えば)その本を読まなくても書けます。だから、「おもしろかった」とか、「星五つ!」とか書いても、それは書評ではないのかもしれません。
    でも、たとえば、『くだものだもの』について言えば、
    >くだものだもの。「にんげんだもの」より、語呂がいい。思わず口の中で言葉を転がしてしまう。
    この一行だけですでに書評になっている、と僕は思います。
    >そんな風にあれこれ考えたことを一旦書くのだが、純粋な本の評価とはいえないと思い、その部分を削って掲載している。
    と書かれていますが、ひょっとしたら、書評でいちばんおもしろいのはその部分ではないのか、とも思います。
    本によって、書き方を変えてみるのもいいかもしれませんね。この本についてはあらすじを書くのはやめよう、とか、この本の書評は短く書いてみよう、とか。
    長文、失礼しました。

    • ぐら
    • 2007年 10月15日 9:03pm

    あらすじに関しては、私はキズキさんとはちょっと違う考えかもしれません。
    確かに誰でも書けるものだけど、だからこそ難しい。書き手の工夫の跡を見るのは、勉強になるし、楽しいものです。
    例えば、文庫本の後ろにある紹介文には、それ自体が作品に思えるような、素晴らしいものがあります。
    良いあらすじを書けるのは、ひとつの能力だと思います。
    ただ、アマゾンの本紹介文のようなあらすじを書くぐらいなら(私のことですが)、リンクを貼ればいいんじゃないか、という気がしています。
    >「おもしろかった」とか、「星五つ!」とか書いても、それは書評ではないのかもしれません。
    ギクッ。考えがまとまらない時、そこに逃げてる自分を指摘されたような…。
    「どうおもしろかったのか」「なぜ、そう感じたのか」ということの方が、大事ですよね。
    このブログでは星の数を載せているのですが、本当はこの五段階評価って嫌いなんですよね。
    たった5つの星で、その本の何が分かるんだ!と、一人突っ込んでいます。
    でも、時間がない時や、評者がどんな立場で文章を書いているかを知る時には便利なので、あった方がいいかな、ぐらいに使っています。
    >本によって、書き方を変えてみるのもいいかもしれませんね。
    なるほど。そういうやり方もあり、ですね。
    いろいろ試行錯誤しながらやっていくしかないのかもしれません。
    参考になりました。ありがとうございます。
    重複した分、削除しておきました。

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