『ルリユールおじさん』いせひでこ
思うところあって、いま、製本を習っている。
実際に手を動かしながら覚えていく、「習うより馴れろ」の世界。紙に折り目をつけ、糸でかがり、のりづけし、プレスする。手順を書くと簡単そうにみえるが、先生と私とでは、仕上がりがまるで違う。見事な製本をする人の手の動きは、思わず見とれてしまうほど美しい。
ああ、私も早くあんな手を持ちたい―。そんなふうに切望していた時読んだ『ルリユールおじさん』は、ひときわ感慨深いものがあった。
物語は、ある女の子が、読みすぎてバラバラになってしまった植物図鑑を直してもらいに、ルリユールおじさんに頼みに行く、というシンプルなもの。
ところで、この「ルリユール」という言葉、日本ではあまり馴染みがない。ヨーロッパでは職業として発展してきた歴史があるが、日本にはこの文化がないのだ。「ルリユール」とはフランス語で、工芸製本のこと。現代では製本のほとんどの工程を機械がやっているが、紙を糸でかがり綴じることから表紙に装飾をほどこすまで、すべて手作業で行うのだ。
植物の好きな少女と、年老いた職人。この二人をつなぐのは、一冊の本。そして、本を愛する心。
ルリユールの作業ひとつひとつは、いたって地味である。アートと捉えられている今とは異なり、製本をする者は黒子の存在といえるだろう。地位も名誉も求めず淡々と良い仕事をする、職人の誇りが伝わってくる絵本である。
中でも、同じくルリユール職人だった亡き父親と対話しながら本と向き合うルリユールおじさんの姿がいい。こうしてルリユールの技と思いが、人から人へ受け継がれていく。過去を回想しながら、次世代へ本を残そうとする印象的な場面である。
ただ、これは好みの違いかもしれないが、最後のページは蛇足だろう。愛しそうに本を抱きしめる少女や、丁寧に本を直していたルリユールおじさんの姿をみれば、わざわざ書かなくても分かることだと思う。
いせひでこさんの作品に触れるのは本書が初めてなのだが、青い色にこだわりがあるのだろうか。優しいタッチで描かれた水彩画は、たくさんの青色で彩られている。
少女は明るい青色のコートとワンピースを、ルリユールおじさんは濃い青色の上着と帽子を着ているし、店の扉も同じように青色だ。よく見ると大きなアカシアの木まで青い陰をつくり、夜の町並みも暗い青と化す。
同じ青なのに、どれも違った表情を見せるのがおもしろい。[Amazon]



ぐらさん、こんにちは。
製本を習ってらっしゃるのですね。素敵です。
いせひでこさんの作品は、わたしもこの作品がはじめてでした。
続けて他の作品にも手を伸ばしかけたところ、
あまりの作品の多さと、作品ごとの作風の違いに圧倒されて、
早々挫折してしまいました。
この「ルリユールおじさん」はやさしいタッチですが、
力強いタッチの油彩もあるんですよ。
いつかまた、挑戦してみたいです。全作品読破を。
ルリユールおじさん
ものつくるひとの手。そのまなざし。その姿勢。その愛情…そのすべてにほろりときた。“RELIEUR”ルリユール(製本)という、日本では聞き慣れないヨーロッパで発展した職業を描いた、いせひでこ作『ルリユールおじさん』(理論社)には、ものつくるひとの精神が溢れて、…
たくさん本を出されていますよね。
読んだことのあるものもいくつかあって、「ええっ、これも伊勢さんが描いていたんだ!」と驚くことしきりでした。
原画展を観に行かれたとのこと。羨ましいです。
力強いタッチの油彩ですか。
この絵本からは想像がつきません。
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絵本との再会
ある人に本の贈り物をすることになり、本屋に立ち寄る。 最近は Amazon ばかり使うので、本屋は久しぶりだ。 本屋に来ると、習慣のように絵本コーナーを眺める。 いくつかいい絵本を見つけた。せんをたどって (L. ユンクヴィスト)だんろのまえで (鈴木まもる)ルリユール、…