『魔使いの弟子』ジョゼフ・ディレイニー

魔使いの弟子 (sogen bookland)ファンタジーで、「魔女」と「ドラゴン」を登場させるのは、諸刃の剣だと思う。強烈な個性があるぶん、うまく扱えないと、既にある作品の二番煎じ(ひどい場合は三番煎じ)になってしまう。
『ハリー・ポッター』の大ヒット以降、続々とファンタジーが出版されるようになったが、どれも似たり寄ったりか、それ以下の出来でしかない。「魔女」と「ドラゴン」なんて、もうインフレ状態。この二つのどちらかが出てきた時点で、げんなりしてしまう。
というわけで、二巻目が出たつい最近まで、『魔法使いの弟子』だと思い込んでいたばかりに、本書を手に取るのがずいぶん遅くなってしまった。惜しいことをした。一見よくある「魔法モノ」を装っているようだが、中身は違う。これは、魔女が登場するファンタジーの中では、久しぶりに良質のものではないだろうか。

物語は、七番目の息子である父を持つ、七番目の息子・トムが、魔使いに弟子入りし、恐ろしい幽霊や魔女から人々を守る修行をしていく、というもの。
なんて陳腐で、先の読めるストーリーなんだろう!正直、物語の半分ぐらいまでは新鮮味がなく、「ああ、またこの手のファンタジーか…」と惰性で読んでいた。
ところが、読み進めていくうちに、何か、引っかかる。何かが違う。
西欧のファンタジーはキリスト教の影響か、善悪どちらかにはっきり分ける傾向があって、私はそれにとても抵抗があった。
だが、本書は作者がイギリス人にもかかわらず、安易に善と悪に二分化しない。それを象徴するのが、アリスという女の子。彼女の存在と、それを見守るトムの姿が、作者の思想を物語っていると思う。

アリスはこれからもずっと、完全な善でもない、完全な悪でもないあいだのどこかで揺れ動きつづけるんだと思う。だけど、ぼくたち人間はみんな、そうなんじゃないだろうか。完璧な人間なんて、どこにもいない。(P.288)

どうだろうか。この箇所を読んだだけで、これまでのファンタジーと少し違うのが分かるのではないだろうか。

この『魔使いの弟子』は続きもので(本書の物語は一応、完結しているが)、次が『魔使いの呪い』で、イギリスでは第三巻『The Spook’s Secret』、第四巻『The Spook’s Battle』まで出版されている。また、映画化も決まっているとのこと。
どんな展開になるのか、続きが楽しみなシリーズである。[Amazon]

イギリス:金原瑞人/田中亜希子・翻訳

The Spook’s Apprentice (Red Fox)
Joe Delaney
The Spook's Apprentice (Red Fox)

    • mokuri
    • 2008年 5月11日 9:17am

    ようやっと読み始めました。
    おもしろいですね。
    作者がこれからどこへ連れていってくれるのか楽しみです。

    • ぐら
    • 2008年 5月11日 1:21pm

    続きものって、その世界にどっぷり浸れるけど、付き合うのはけっこう根気がいるんですよね。
    痛し痒し。
    このシリーズも、どんな風に展開していくのか楽しみながら待つことにしましょう。

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