『君のためなら千回でも(上・下)』カーレド・ホッセイニ

君のためなら千回でも(上巻)

  • カーレド・ホッセイニ
  • 早川書房
  • 693円

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リビアの小さな赤い実物語を追いながら、以前読んだ『リビアの小さな赤い実』(ヒシャーム・マタール著)という作品を思い出していた。亡命して異国で暮らす作者や、アフガニスタンとイランという舞台設定、良心の呵責に苛まれる主人公が少年時代を追想する構成など、重なり合う部分が多いのだ。
翻訳作品を読む楽しみのひとつは、その国の文化や風土を感じられることだが、中近東を舞台にした小説には、日本とあまりに異なる情勢や慣習に驚かされる。
「人格」というものが、どのようにして形づくられていくものなのかは分からない。だが、さまざまな民族や宗教が混在する複雑さに加え、長年積み重ねられた歴史的背景、男女差や身分差などが厳然と存在する環境で生まれ育つことが、一個の人間に少なからず影響を与えることは間違いないだろう。

それは、物語の核となる、少年時代の主人公・アミールと、使用人の息子・ハッサンの関係にみてとれる。乳兄弟の二人は仲が良く、遊ぶ時はいつも一緒。けれど、1970年代のアフガニスタンでは、単純に「友だち」ではないのだ。どれだけお互いの気持ちを分かり合っていても、その隔たりをアミールは常に感じている。
この、特有の風習は、アミールの父・ババや、アミールのよき理解者であるラヒム・カーンの人生にも影を落とす。素直に自分の思いのまま行動できない事情を背負っているからだろうか、ここには、登場人物たちの行き場のない感情や自責の念がいくつも漂っている。
とはいえ、なにもこの作品の主眼は、理不尽な環境にあるのではない。過ちを犯した人間の贖罪という普遍的な題材を描いているのだ。
人は、大なり小なり後悔や罪の意識を感じながら生きていると思う。あの時、ああしていれば…。もう少し勇気があったら…。そんな思いが水泡のように浮かんでは消えていく。
それが、時とともに忘れてしまえる程度ならいい。けれど、「ほんの数日の出来事や、たった一日の出来事さえもが、その後の人生をまるっきり変えてしまう場合がある(P.202)」ような、決定的なターニング・ポイントだったらどうか―。

カイト・ランナー
場所を変え、時が過ぎようとも、決して逃れられない罪の意識に、アミールはついに対峙することを決意する。そして、勇気をもって過去を清算するために祖国へ旅立ったアミールが手にしたものは、確かな未来だった。
原題は、『THE KITE RUNNNER(凧追い)』
暗く重苦しい内容にもかかわらず、するすると読み進められるのは、伏線が張り巡らされた巧みな構成にあるのだろう。ひとつひとつ点だったエピソードが繋がり、最後に真実が明らかになる。
読後、救われた気持ちになるのは、そこにある、人の優しさや弱さを愛しく感じられるからではないだろうか。

ところで私は読んだ作品を、つい色でイメージしてしまうのだが、本書はやはり、赤である。
アミールとハッサンの想い出のザクロの赤い実、アミールの人生を大きく変えた日に揚げた凧の色、そして、理不尽に流された血。本を閉じた後も、赤色が残像のように見えている。[Amazon]

アメリカ(アフガニスタン出身):佐藤耕士・翻訳

The Kite Runner
Khaled Hosseini
The Kite Runner Movie Tie-In

君のためなら千回でも スペシャル・エディション [DVD]
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本書は、本が好き!経由で献本していただきました。

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    • piaa
    • 2008年 3月6日 12:56am

    最近更新がなかったのでちょっと心配しておりました。
    元気にしておられましたか?
    中近東が舞台の本というのはなかなか触れる機会がないので、興味がわきますね。
    面白そうですがこの邦題はどうにかならなかったのでしょうか。
    「カイト・ランナー」もいい題名だとは思えませんが、映画化されたからといって本のタイトルを替えちゃうのはどうなんでしょうね。

    • ぐら
    • 2008年 3月6日 7:50pm

    気にかけてくださって、ありがとうございます。
    本は読んでいたんですが、あまりおもしろいと思えるものがなくて、更新が滞ってました。
    でも、この作品はオススメです。
    たしかに、タイトルの変更には大いに引っかかります。
    作中に何度も出てくる台詞なんですが、これだけ抜き出されると、安っぽい恋愛小説のようです。
    いかにも「感動ものですよー。泣けますよー。」といわんばかりで、偏屈な私なんかは反感をもってしまいます。
    内容の出来過ぎ感(よく言えば、すべてが密接に絡み合っている)に、少し突っ込みたくなりますが、それでもやっぱり読んでよかったと思える小説でした。

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