『ほんものの魔法』立原えりか
ブックオフへ行くと、たまに掘り出しもの(あくまで私にとっての)に出あえるのが嬉しい。100円コーナーの棚にあった本書を見つけて、速攻でレジへ持っていった。
立原えりかさんの作品は、とにかく絶版が多いのだ。子どもの頃読んだあの物語をもう一度…と思っても、いま手に入れるのが難しい。
本書は、青土社から刊行された「立原えりかのファンタジーランド 全16巻」の15巻目にあたる。収録作品は、「町のあかり」「生姜入りパンを焼く日」「優しい幕間」「十万粒のなみだ」「夜の舟のり」「ほんものの魔法」「南の海のものがたり」「飾り窓」「愛の誓い」の9篇。
9篇の中では特に、火吹き男になった恋人を元の姿に戻すため、「うっとりするほど幸福な日に流すなみだ」を十万粒集める妖精の物語・「十万粒のなみだ」と、かいじゅうショーで出会った路上芸人と女の子の交流を描いた「愛の誓い」が好きだ。
どちらも相手を大切に想う優しさに溢れ、ゆっくり年月をかけて育まれた愛情は、幸福な読後感を残す。
その一方で、立原さんの童話の奥には、残酷さや悲しみも潜んでいる。
「生姜入りパンを焼く日」や「夜の舟のり」では、親は我が子のことを分かっているようでいて、実は子どもはまったく別のことを考えている。そんな気持ちのすれ違いは、ウィンドウに飾られた人形を羨む少女を描いた「飾り窓」にもみられる。このラストは、はっきり言って救いがない。ひやりとした怖さも感じる。子どもが読むには酷だろうとも思う。
けれど、立原さんの物語を通して、読み手は現実の痛みやいつか訪れる親と子の別れなどを疑似体験していくのではないだろうか。だから、せつなさで胸がしめつけられるのに、その悲しみは決して不快なものではなく、しばらくその感情に浸ってしまいたくなるのだ。
「愛の誓い」の中で、成長した女の子が手紙にこんなことを書く。
ときどき、わたしは自分が大きくなって行かなければならないことや、いろんなことがわかってしまったことを、さびしいとおもいます。(P.213)
大人になって知識が増えるというのは、いいことばかりではない。私自身、今より子どもの頃読んだ本の方が強烈に印象に残っているし、自分のものになっていた。
不思議なものをありのまま受け入れる心。ほんの小さな発見にワクワクする喜び。
成長するにつれて色あせてしまったそんな感情を味わいたくて、立原さんの童話に戻ってきてしまうのかもしれない。それでも、「これを子どもの頃読んでいたら、もっと違う風に感じただろうな」と、悔しくなることもあるのだが。



おお~、
来ましたね、立原えりか。
実は私もすごく好きな作家です。ブログでも「しあわせな森へ」「青い羽のおもいで」「でかでか人とちびちび人」をレビューしています。他にも何冊か仕入れましたが、もったいなくてまだ読んでいません。
残念ながらこの本は読んだ事がありません。
というか、この人の本って今はめちゃくちゃ入手困難ですよね。古本屋で見つけると、私も速攻レジ行きです。
来ましたよ、立原えりか。
ファンが多いのに、なんで絶版なんでしょうね。
でも安房直子さんの例もあるし、いつか全集として復刊されるんじゃないかと期待しているんですが。