『ユゴーの不思議な発明』ブライアン・セルズニック
舞台は、1931年のパリ。
主人公は、駅の中に隠れ住むユゴー・カブレという孤児だ。手先の器用な彼は、壊れた時計やおもちゃを直すのはお手のもの。そんな彼がどうしても直したいのが、亡き父が遺した一体のからくり人形だ。ユゴーがからくり人形に秘められた謎を探り始めたとき、運命の歯車はゆっくりと動き出す。
これは、本好きというより、映画好きに捧げられた書だと思う。
ここには、映画へのオマージュにあふれている。なにしろ、この一冊の本そのものが、白黒映画を表現しているのだから。
物語の中にちりばめられたたくさんの絵は、まるで映画フィルムのコマのよう。徐々にズームインしていったり、パッと場面転換したり、フェイドアウトしたり。特に、目の表情がいい。動きのある作品なので、本の分厚さが気にならないほど夢中になって読み進めてしまう。
ただ、この作品は翻訳には不向きだと思う。とりわけ日本語には。アルファベットならともかく、印刷された活字の漢字が入ると、最後の仕掛けにどうしても違和感を覚えてしまう。「なるほど、すごいなぁ」と頭では理解しても、しっくりこないのだ。
本書は、至るところに作者の工夫の跡が見られる精巧な一冊である。二部構成のそれぞれが12章で終わるのは、時計の針と合わせているのだろう。こういう作品は、どこか少しでも変えてしまうと、調子が狂ってしまうのではないだろうか。
作中でユゴーが語った、こんな印象的な言葉がある。
世界ってひとつの巨大な機械だと思うと楽しくなるんだ。機械にはひとつとしていらない部品はない。ちゃんと必要なだけの数と種類の部品がある。もし世界が巨大な機械なら、ぼくも理由があってここにいるに違いない、そう思えるからね。(P.386)
「歯車の一つになる」との言葉にはマイナスのイメージが強いが、こんな捉え方もできるのか、とハッとさせられた。遊び心あふれる仕掛けの中には、人間へのあたたかな眼差しが注がれているのだ。
ところで本書は、マーティン・スコセッシ監督で映画化が決まっているとのこと。映画では登場人物ひとりひとりの心の内がじっくり描かれるのかもしれないが、映像化すれば、作者の意図した本書のおもしろさは伝わらない。ここは是非、本を手に取って読んでみてほしい。
ページをめくると、聞こえてこないだろうか。カタ、カタ、カタと回り始める音が。[Amazon]
アメリカ:金原瑞人・翻訳
The Invention of Hugo Cabret
Brian Selznick

■『ユゴーの不思議な発明』公式HP
遊び心いっぱいで、楽しいサイトです(英語)



ほんと、映画のような本ですよね。
映画大好きなので感動しました。
12章と時計の針は気づきませんでした。なるほどです。
ユゴーやイザベルのクローズアップ、やっぱり目ですよね。
映画好きにはたまりませんよね。
モノトーンがまた、郷愁をそそります。
YouTubeで月世界旅行の映像が観れるんですね!
過去と現代が出会うような、不思議な感じがします。