『赤い糸の電話』立原えりか
本書には、11篇の物語が収められている。
立原えりかさんの作品は、優しさの中に現実の痛みが潜んでいることは、以前のレビューで触れた。ここには、昔助けられた恩を忘れなかった動物と人との交流を描いた「ねこのおんがえし」や「一月のウグイス」といった心あたたまる物語もあるが、全体的に切なくて毒のあるものの方が多い。
「不老不死のくすり」は、ある青年が、小学一年のとき担任だった先生にそっくりの女性を偶然見かけるところから始まる。青年は、生徒たちから「なのはな先生」と慕われていた先生のこと、かつて自分が先生と結婚したいとまで願ったことなどを思い出す。
少年の一途で純粋な思いが微笑ましい物語といえるだろう。が、私は最後の一文にぞっとしてしまった。なのはな先生の立場にたってみると悲劇にしか思えない。ときに純粋さは、知らないうちに人を傷つけることがある。そんな風に読んでしまうのは、私がひねくれているだけだろうか。
表題作「赤い糸の電話」は、亡くなった妻と夜の遊園地でデートする男性の姿が、息子の目を通して語られていく。死んでもお互いを想い続けるロマンティックな話の中に、決して報われることのない愛が描かれ、切ない。
優しさと、残酷さと―。相反する二つの側面が、同時に物語の中にすっと溶け込んでいるのが、立原作品の特徴といえる。
この特徴をもっとも堪能できるのが、「冬の旅」だ。
世をはかなんだ人たちを乗せてひた走る列車。木の葉の乗車券や、ヒイラギの葉でできた帽子をかぶった車掌などメルヘンチックな描写の根底には、「死」というものが横たわっている。辿り着いた終点は、果たして幸福な世界といえるのか。けれど、そこにも立原さんのあたたかい眼差しを感じずにはいられないのだ。私が本書の中でベストを選ぶとすれば、この作品。
「アンドロメダ工房」の中で、受験に失敗して落ち込む少年は、偶然出会った女性にこんな言葉をかけられる。
「あなたは知らなかったの?この世はにがいことだらけなのよ。ビールの十倍も二十倍もにがいわ」(P.143)
本書は、そんな苦みをたっぷり含んだ極上のファンタジーである。



これも持っていません。上の要約をちょっと見ただけでも読みたくてたまりませんが…
結構たくさんの本が出ていたのにあらかた廃刊ですねえ。
私はこの作家の「風船に乗った白い馬」(だったかな)という本が欲しくてたまらないのですが、全然見つかりません。この本の中に「ぬいぐるみ」という作品があって、それがもう一度読みたいのですが…
もしかして、『木馬がのった白い船』ですか?
それなら持っています。
「ぬいぐるみ」という作品は、皆から“シオとコショウさん”という愛称で呼ばれている、ゾウのぬいぐるみを着た男が主人公の物語なのでは?
タイトルとは裏腹に、ひりひりとした痛みを伴う作品ですよね。
これは、もはや児童書の範疇に収まらないでしょう。
でも、piaaさんが紹介している内、2冊は持っていないんですよね~。
ないと余計に読みたくなってしまいます。
そうそう、それです!
愛する女性を侮辱されて「あの人はブタじゃないぞ!」(かなんとか)と逆上して傷害事件を起こしてしまったシオとコショウさんのお話でしたよね!
読みたいなあ~
よく覚えてますねぇ。
「[太字]あの人は貧しくても、ブタじゃないぞ[/太字]」という台詞なので。
刑事ドラマのようなラストがまた、童話らしからぬ雰囲気を醸し出していて、piaaさんの印象に残っているのも肯けます。
>読みたいなあ~
その気持ち、よ~く分かります。
復刊しないのなら、青空文庫みたいにテキスト公開してほしいですよ。