『宝島』ロバート・ルイス・スティーヴンスン
『宝島』を知らない人っているんだろうか。
子どものための世界文学全集の中に必ずといっていいほど入っていた上に、「男の子におすすめの児童書」の筆頭に挙げられていた覚えがある。たくさんの翻訳が出されているのも、人気の高さを物語っているといえるだろう。
ただ、子どもの頃『宝島』で繰り広げられる冒険に胸躍らせた読者でも、この作品の小説としての素晴らしさを知っている人は、案外少ないのではないだろうか。かくいう私がそうだった。これまでの『宝島』が、児童文学として紹介されていたのに対し、大人の鑑賞に耐えうる作品として提示してみせたのが本書の新訳である。
読み始めてみると、宿屋の息子のジム少年が泊り客から宝の地図を手に入れる場面や、知りあいの医師らとともに宝を求めて出航するくだり、島での大冒険など、子どもの頃読んだきりのストーリーをはっきり覚えていることに驚いた。記憶に残るぐらい、楽しい物語なのだ。
反対にこの作品が、のちにジムが宝島での一部始終を書き記す形式で描かれていたこと(途中で医師と語り手を交替する場面もある)は、まったく記憶になかった。一人称で語ることによって、一癖も二癖もある海賊たちの姿や航海の様子が、じつに生き生きと、リアリティーをもって迫ってくる。
また、物語を縦横無尽に飛び回るジムだけでなく、律儀なのかのんびりしているのか分からない母親の可笑しさや、人はいいのに少し抜けたところのある地主の憎めなさ、陽気な顔とぞっとするような冷酷な顔を併せもった海賊シルヴァーの怖さといった他の登場人物に至るまで、個性豊かに描き分けられている。
すべての翻訳を読んだわけではないが、『宝島』は、ストーリーのおもしろさを重視してくだけた表現になるか、航海(海賊)用語に気を取られるあまり硬い(説明的な)文章になるかのどちらかだったように思う。
本書は、イメージしにくい箇所があるとはいえ、語りの躍動感と人物造形の巧さ、多くの資料に裏打ちされた真実味ある18世紀の航海事情といった、小説・『宝島』のもつ魅力をバランスよく訳したといえるのではないだろうか。
訳者あとがきで翻訳の苦労話が書かれているが、航海に馴染みのない者には読みこなすのが難しい作品なのかもしれない。[Amazon]
イギリス:村上博基・翻訳
Treasure Island (Puffin Classics)
Robert Louis Stevenson





古典新訳文庫で出ると知らないうちに、岩波少年文庫版を読みました。
これは「大人が読んだほうが面白いかもしれない児童文学」だと思います。
ところでこの新訳ではオウムのフリントのセリフ「Pieces of eight」をなんと訳していたでしょうか?そこがやたらと気になる。
八銀貨、です。
たしか福音館文庫もそうだったような。
岩波少年文庫は「8レアル銀貨」なんですね。
訳者のあとがきにあるのですが、『宝島』って翻訳者泣かせの作品だそうです。
わたしは海賊たちの歌の中の「デッドマンズ・チェスト」の訳が気になって、この本を読んだ後そこだけ読み比べてみたんです。
本書では「死人箱島」、岩波と福音館文庫は「亡者の箱」なんですが、どっちもピンとこないんですよね~。
島の名前なんだから、いっそのことそのまま「デッドマンズ・チェスト」でもいいんじゃないかな、という気もします。
岩波少年文庫版では「死人の箱」と訳してありました。
昔のアニメでは
「亡者の箱まで にじり登った15人
一杯やろうぜ ヨーホホー」
と歌っていました。
今でも歌えます(笑)
この歌って、何度も出てくるから気になるんですよね~。
やっぱりアニメは口ずさみやすいフレーズになってますね。
そうそう、書店で、ある子ども向けの『宝島』を立ち読みしたところ、ジムが見つかるシーン、海賊の足を踏んだからってことになってました。
結果的には同じなんだけど、そこはオウムの鳴き声じゃないと!
よーほほーじゃなくてよーそろーなんです(涙)
船乗りは今でも使う言葉なんです(涙
コメントありがとうございます。
わたしはアニメを観ていないのでなんとも言えませんが…。
航海用語って一般には馴染みがないんでしょうね。
サウロさん、アニメで正確にどう歌っていたのかはよく分かりませんが、私は「ようそろ」ではないと思います。「ようそろ」は「宜しく候」をつづめた日本製の船舶用語です。
「ヨーホー」は中世から西洋の船乗りたちが使っていた掛け声です。船乗りが出てくる「さまよえるオランダ人」などのオペラなどでも普通に使われています。この場合日本語訳でもこちらを使う方が理にかなっていると思います。
サウロさん、もしこのブログを読んでいたら、参考になさってください。
それにしても、日本と西洋で使われた掛け声の音が似ているのっておもしろいですね。