『キスで作ったネックレス』フランチェスカ・リア・ブロック

キスで作ったネックレス

  • フランチェスカ・リアブロック
  • 東京創元社
  • 777円

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書評

「ウィーツィ・バットブックス」最新刊である。
『ウィーツィ・バット』が誕生したのが1989年、日本で翻訳出版されたのがその10年後。それから約10年の歳月が流れた今、懐かしい仲間と再会できるのは、ほんとうに嬉しい。しかも、これまでの登場人物ほぼ総出演の豪華さ。

突飛な行動を繰り返していたウィーツィも、いまや四十路というから驚く。
二人の娘の子育てが一段落して気づいたのは、ファッションに無頓着になった自分の姿と、かつては熱烈に愛し合った夫のマイ・シークレット・エージェント・ラヴァー・マン(マックス)との冷えた関係。中年の危機を迎えたウィーツィは、スーツケースひとつ持って家を飛び出し、高校時代の思い出の地・ピンクホテルへ失われた愛を探しに行くことに。

「ウィーツィ・バットブックス」の中で私が好きなのは、ウィッチ・ベイビが主人公の『ウィッチ・ベイビ』『エンジェル・フアン』の二作なのだが、本書を読んでウィーツィの存在感の大きさを気づかされた。やはりこのシリーズは、ウィーツィがいなければ始まらない。ウィッチ・ベイビやチェロキー、ダークなど、他の登場人物の物語の中心には、彼女がいる。自分を癒すためにホテルに逃げ込んだウィーツィだが、やがてそこで出会った人々の苦しみを取り除く手助けをするようになっていく。ウィーツィの自分探しの旅と、彼女を取り巻く人々の抱える事情が相互に影響し合いながらラストへと向かっていくのがおもしろい。
そういえば、ウィーツィって本能のままに行動するハチャメチャな女の子に見えるけど、いつも人のために力を尽くしていたんだった。好きな男の子にカミングアウトされても、「そんなことはどうだっていいよ」とありのままを受け入れ、一緒に理想のボーイフレンドを探しに行き、家の前に置かれていた赤ちゃんを自分の子どもとして育ててしまうのだから。

ドラッグ、同性愛、十代のセックス・妊娠、複雑な家族構成など、世の中の“常識”を軽々と(ときには危なっかしく)飛び越えてしまうウィーツィたちに魅了されるのは、そこに溢れんばかりの愛があるからだと思う。
本書では9.11以降のアメリカが描かれているが、ウィーツィたちは現実の世界が苦しみや悲しみ、暴力で満ちていることを充分に分かっている。それでも、彼らは愛する者を求め、共に過ごす時を慈しむことをやめようとしない。そこにこそ、幸せがあると知っているから。
悲しみから生まれた宝石が、愛を復活させるネックレスになるというのは、ブロックらしい美しいおとぎ話である。ひとつひとつ(ひとりひとり)でも綺麗だが、それらが繋がると、さらに美しく光り輝く。キスでできたネックレスには、そんな意味も込められているのかもしれない。

今回、本書を読むにあたり、シリーズ5冊を読み直してみたのだが、昔読んだ時より登場人物たちの心により近づけたような気がする。ド派手な振る舞いの裏に潜む彼らの孤独や哀しみ、強さといったものがひしひしと伝わってきて、改めていい物語だな、と感じた。ブロックは特に読者の年齢を気にしていないそうだが、本書はある程度歳を重ねた人の方が感じるものが多いと思う。
ただ、いつもながら不満なのだが、ブロックの翻訳本の装丁はどうにかならないものか。原書の方がクールとキュートが同居したような作品をうまくイメージしているし、可愛い。本書の場合、文庫本だから制約されるとはいえ、なんか違うんだよなぁ、ともやもやしてしまった。[Amazon]

アメリカ:金原瑞人/小川美紀・翻訳

Necklace of Kisses
Francesca Lia Block
Necklace of Kisses: A Novel

ウィーツィ・バットブックス全5巻

  1. 『ウィーツィ・バット』・・・物語はここから始まった。
  2. 『ウィッチ・ベイビ』・・・“魔女の子”ウィッチ・ベイビのルーツを探す旅。
  3. 『チェロキー・バット』・・・三人のパパを持つチェロキー・バットの奮闘記。
  4. 『エンジェル・フアン』・・・ウィッチ・ベイビ、愛するエンジェル・フアンを追ってNYへ。
  5. 『ベイビー・ビバップ 』・・・『ウィーツィ・バット』の前日譚。ダークの魂の解放の物語。

本書は、本が好き!経由で献本していただきました。

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