『かわべのトンイとスニ』キム・ジェホン
5月である。新緑が目に眩しいこの時期が、年間をとおして一番好きだ。爽やかに晴れわたった青空を、つい時間を忘れて見入ってしまう。
子どもの頃、浮かんでいる雲を眺めながら、そのかたちが何に見えるか、想像しては楽しんでいた。さまざまに姿を変える雲に意味をもたせると、ぐっと身近に感じられるからおもしろい。
さて、好天に恵まれたゴールデンウィーク、川へ遊びに行った人も多いと思う。木々やあちこちに転がっている岩が、ただの木や岩ではなく、なにか別の姿に見えたことはないだろうか。周りをじっくり観察してみると、目の前に違った風景が広がっていることに気づくだろう。
朝早く、町の市場へ出かけたお母さん。
トンイとスニの兄妹は待ちきれずに、お母さんを迎えに行くことに。道々、川辺には不思議な形をした岩が並んでいる。大きな鳥、眠っている小熊の顔、おそろしい恐竜・・・。二人の子どもは、いろいろな表情を見せる岩と対話しながら歩いていく。

隠し絵本といえば、安野光雅の『もりのえほん』が傑作である。あちらは森が舞台だが、こちらは川。本を縦にしたり横にしたりして注意深く見ていると、絵のなかに隠れたもうひとつの絵が浮かび上がってくる。
隠し絵本は、1ページ1ページ堪能できるのがいい。ここ最近読み飛ばす読書が多かったので、このゆったりとした時間の流れがなんとも心地よい。答えは最後に載っているので、どんな絵が隠されているか分からなくても大丈夫。この絵本が素晴らしいのは、本文と隠された絵がリンクしているところだ。探す楽しみを削ぐことになるので詳しくは書けないが、お兄さんが妹を背負っている絵には、ほんとうに感動した。
そう、この絵本のもうひとつの魅力は、兄妹の微笑ましい姿にあるのだ。「ママにあいたい」と駄々をこねる妹をなだめて大きな愛情で包み込むお兄ちゃん。水切りをしてみせたり、おんぶしたり、妹を大切に扱う姿がいじらしい。そんなお兄ちゃんを頼りにする妹の可愛らしさも、作者はやさしいタッチで描いている。
物語は、作者のキム・ジェホンがソウルを流れる川・東江(トンガン)を歩き回っていたある日の体験をきっかけにして生まれたもの。この、緑を基調とした東江の風景がとても美しい。一見、写真かと見間違うほどの繊細で綺麗な絵である。
どれだけ物質的に豊かになっても、必ずしも幸せとはいえない。かえって拝金主義が横行して、心が荒んでしまうかもしれない。美しい自然と共に過ごすことの豊かさを、この絵本は静かに伝えている。[Amazon]



このおにいちゃんでさえ、おんぶしてあげたいくらいじゃあ
ないですか。
もう、こういう絵を見ただけで、胸がつまります。
こんな、豊かな思いを一人でも多くの子ども達、
いいえ、大人たちにも伝えていきたいですね。
こどもの頃の、こんな一途な思いを
私はどこに忘れてきたのでしょうか。
この絵は、そんな忘れ物をしてきたことを
思い出させてくれました。
ほのぼのして、いい絵本ですよ。
ふうたんさんは気に入るんじゃないかな、と思います。
詳しく書けないのが歯がゆいのですが、隠れていた絵に気づいたとき、「おぉ~、すごい!」と思わず声が漏れました。
美しい自然と、両親の愛情に見守られて育つ子どもの豊かさを感じられる絵本です。