『ツバメ記念日―季節風*春』重松清
春という季節からは、どんなイメージが思い浮かぶだろうか。
芽吹き、桜、出会いと別れ、巣立ち、新出発・・・。他にもいろいろあるだろうが、そんな春の風景を一冊に閉じ込めたのが、本書である。これと似た短篇集でいえば、『卒業』だろう。
『ツバメ記念日―季節風 春』は、産経新聞に連載されていたものを書籍化したもの。今後3ヵ月ごとに、夏、秋、冬と、続々刊行される予定だという。重松清の描く日本の歳時記、といったところだろうか。
重松清の短篇を読んでうまいなぁと感じるのが、書き出しの一文である。例えば最初の「めぐりびな」は、こんな文章で始まる。
七段飾りのひな人形を贈られた。
簡潔な文章なのに、荷物が部屋を占領する場面や語り手の困惑した心境が手に取るように分かる。ちなみに、母親にこの一文だけを読んで聞かせたところ、「ご愁傷様」という言葉が返ってきた。
必要なことをきちんと伝える文章は、作文のお手本のようだ。その後に続く物語にすっと入り込めるのは、この書き出しの力が大きいと思う。ただこの作品、嫁と姑の確執を描くのかと思いきや、意外にも物語は語り手の女性の過去へと遡ってゆき・・・。
もう、重松清節炸裂なのである。「泣ける」という謳い文句があまり好きではないので、ここは敢えて「心が揺さぶられる」と書いておこう。
本書には、12の物語が収められているが、どれも読んだ後心があたたかくなる作品ばかりだ。重松清ファンなら、「ああ、重松清だなぁ」と思わず呟いてしまうような短篇集なのだ。
ここ最近、ベタな設定や展開のあざとさが鼻についていたのだが、やっぱり重松清の小説はいい、悔しいけれど。作者の術中に嵌っているのが分かっていても、登場人物たちとともに悲しみ、ともに喜び、最後に満たされる私がいる。2、30ページほどの短さも丁度いいのかもしれない。
なかでも、「島小僧」がよかった。「故郷を出てゆく若者」というおきまりのパターンだが、軸足はどちらかというと「故郷に残る若者」の方に置いているように感じる。生まれ育った島をこよなく愛する若者へのあたたかなまなざしは、故郷から遠く離れた作者の憧憬の念からきているのかもしれない。[Amazon]



ぐらさん、こんばんは。
重松清さんは、まだ読んだことがありませんでしたが、
ちょっと読んでみようかなと、思います。
7段飾りの雛人形が送られてきたら、どうしましょう?!
同居人が増えた状態でしょうね。お雛様の季節だけでなく、
しまいきれない箱の数々と、一年中仲良く暮らさないと
いけません。
気がつけばもう、つばめの季節ですね。
今年もまた、二階のベランダに蜂が巣作り始めました。
重松清さんはわたしの好きな作家のひとりなので、是非是非読んでほしいです。
この短篇集は、初・重松清にぴったりの一冊だと思いますよ。
生きものの巣作りや、親鳥が雛にエサを与えているのを見守るのって癒されますよね。
「卒業」
◇「卒業」 重松清 親が子を思う心。 子が親を思う心。 自分が親になってみて、母の気持ちが痛いほど 解ってしまった今、消してしまいたい自分の過去が 山ほどあるのが、とてもつらい。 家族だから言わなくても伝わる言葉がある。 家族だから言わなくては伝えられ、…
ツバメ記念日季節風・春 重松清
ツバメ記念日―季節風*春
装幀は吉田篤弘・吉田浩美。産経新聞連載を改稿改題。
出会い、別れ、旅立ち、母の思い出など春がテーマの短編集。…
はじめまして。
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心があたたかくなる短編集でしたね。
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この季節風、1年をとおして追いかけていきたいシリーズですね。
藍色さんの〈夏篇〉のレビュー、楽しみにしています。
ツバメ記念日―季節風*春<重松清>-(本:2008年112冊目)-
ツバメ記念日―季節風*春
# 出版社: 文藝春秋 (2008/03)
# ISBN-10: 4163268006
評価:92点
表題作『ツバメ記念日』をはじめ12編の短編集。
春がテーマになっているだけあって、3月から5月くらいに起こる身近な出来事を、見事なまでに感動的な話として作り上げ…