『カラシニコフ自伝 世界一有名な銃を創った男』エレナ・ジョリー
「カラシニコフ」、またの名を「AK47」。軍事に疎い人でも、一度は見聞きしたことのある言葉ではないだろうか。名称を知らずに、カラシニコフを握った兵士たちの姿をテレビや新聞を通して見ているかもしれない。
この自動小銃によって、どれほどの血が流され、どれだけの人間が自由を手に入れたのだろう。最近では、ビンラディンらテロリストが使っていることで悪いイメージの方が強い。ただ本書は、銃器がもたらした影響を政治的・歴史的に評価するものではない。それを作った人間・カラシニコフに焦点を当てた一冊なのである。
実をいえば、タイトルを見るまで「カラシニコフ」が設計者の名前であることを知らなかった。しかも、カラシニコフ氏がご存命で、80歳を過ぎた今なお精力的に仕事に取り組んでおられるとは。
「カラシニコフ」は、創造主の手を離れて今や世界中に出回っており、その数は六千万とも八千万ともいわれている(もっとも、正確な数は誰にも分からない)。ところが驚くことに、彼個人は売買された銃器からまったく金銭を受け取っていないという。工場として特許を取ったのも、生産からずっと後になってのこと。長年にわたって世界中で使われていることを考えれば、その利益は莫大なものとなったに違いない。
一家でシベリア追放された苦難の子ども時代、兵士として祖国のために戦った青年時代。戦争の時代を生きたカラシニコフの人生は、ソ連の歴史と歩調を合わせるかのようである。
ファシズムへの対抗心から銃器設計に携わるようになり、やがてAK47の開発・ソ連での規格化へと至る様子は、「プロジェクトⅩ」さながら。専門的な勉強をしたことのない彼が、独学でライバルを唸らせる高性能の銃器を作りあげるのだから、おもしろい。ありとあらゆる国家勲章を受け、余裕のある生活を送っているとはいえ、地位も名誉も財産も、おそらく彼にとってはモノづくりほど価値あるものではないのだろう。
今ではその名前が独り歩きしているが、人間・カラシニコフは技術者の誇りを持ち続けた、ちょっと頑固な人物だった。ただ、スターリンを「二十世紀の偉大な国家指導者のひとり」と持ちあげる一方で、ゴルバチョフやフルシチョフたち他の指導者を毛嫌いするなど、好き嫌いが激しく政治には疎いと思われるが。
ところで、本書は聞き書きという手法で書かれた自伝である。カラシニコフの思いが赤裸々に綴られ、彼の人となりがよく分かる一冊だが、自慢めいた語り口には少々辟易した。あくまで個人的な印象だが、本書の場合、一般的な自伝よりもさらに割り引いて読んだ方がいいと思う。[Amazon]
カラシニコフ I
松本 仁一

カラシニコフ II
松本 仁一




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