『スカイシティの秘密』ジェイ・エイモリー
- ジェイエイモリー
- 東京創元社
- 1155円
Amazonで購入
書評
浮ついた状態のことを「足が地に着かない」と言うが、本書に登場する天空人(エアボーン)たちは、もともと足が地面に着いていない。
地上での大災害の後、生存者たちは巨大な柱を立て、その上にいくつもの都市(スカイシティ)を建設。やがて人々は翼をもつ姿に進化を遂げ、平和で豊かな社会を築き上げていた。ところが、突然地上からの天然資源の供給が途絶え、存亡の危機に直面する。その原因を探るために地上へ派遣されることになるのが、主人公・アズだ。
世界を救うために選ばれたのが優秀な大人ではなく、生まれつき翼のない少年というところがおもしろい。飛べないアズは、スカイシティの中では弱者である。だがその身体的特徴ゆえに、天空と地上の橋渡しという使命を帯びることになるのだ。欠点に思えていたものが、逆に自分を活かす強みとなる。そんな前向きな姿勢が感じられる作品である。
ストーリーも、爽やかで明るい。400ページ強のボリュームだが、一章が短く(99章もある!)テンポが良いので、一気に読めてしまう。
しかし、これでは満足できない。
「天空と地上に分かれた世界」という期待させる設定の割には、ストーリー展開はいたって平板で先が読めてしまうし、きれいにまとまった内容がむしろ小粒のファンタジーに思える。
また、大部分が地上を舞台にした物語は、戦ったり逃げ回ったりする場面が多く、終始ドタバタした印象を受ける。本書ではアズとキャシーの交流がひとつの柱になっているものの、最後まで読み終えても、この二人の間にどうして友情が芽生えたのか、いまひとつ理解できない。
おそらく、この作品はすべてが単純すぎるのだと思う。ストーリー展開もそうだし、衣の権威をかざす聖職者や利己的な革命指導者といったステレオタイプな人物造形もそうだ。現実はこんなものかもしれないが、人間の一側面だけを誇張して描くのは、あまりに短絡的ではないだろうか。そのせいか、アズは16歳という年齢にしては幼く感じた。
天空と地上―ふたつの世界を対比させながらも、大地への感謝を忘れたスカイシティのもろさと格差が広がった地上の惨状を、「真実から目を背けた民衆」という共通点で描き出したところはうまいと思う。ただ、献本していただいて厚かましいのを承知の上で書くと、文庫本にしては安くない本書を自腹で買うのはためらわれる。
もっと細かいことを言えば、本書に頻繁に出てくる「マジポン」という訳文が気になって仕方がなかった。「本当に」という意味の、粗野であまり上品ではない言葉使いを表現しているのだろうが、「マジで」ならまだしも、「マジポン」って・・・。これ、いま使っている人いるんだろうか。
思えば、デイヴィッド・アーモンドの『クレイ』という作品で「あいよ」という訳文にも違和感を覚えたが、金原さんはくだけた表現を求めるあまり、どんどん遠い世界に行っておられるように感じる。[Amazon]
イギリス:金原瑞人/圷香織・翻訳
The Fledging of Az Gabrielson (The Clouded World)
Jay Amory

※本書は、本が好き!経由で献本していただきました。

スカイシティの秘密

コメントはまだありません。